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タネとチエ

ファンドの比べ方

「どれがおすすめか」ではなく「何をどう見ると比較になるか」を書いています。判断の材料と枠組みまでを示し、判断そのものは委ねる、という切り分けです。

リターンは不確実、コストは確実。

なぜ: 将来のリターンは誰にも分かりませんが、信託報酬は必ず毎年差し引かれます。不確実なものを追うより、確実に引かれるほうを下げるほうが、手元に残る額への効き方が読めます。

1. 何に連動しようとしているか

ここが決まらないと次が決まらない

ここが決まらないと、あとの比べ方が決まりません。連動対象指数が同じなら、どの運用会社の商品でも値動きはほぼ同じになります。逆に指数が違えば、コストが同じでも別物です。

  • 「全世界株式」といっても、MSCI ACWI と FTSE グローバル・オールキャップでは、含まれる小型株の範囲が違います。
  • 「先進国株式」には日本が含まれません(MSCI コクサイ)。全世界を持ちたいなら、日本と新興国を別に足す必要があります。
  • 同じ指数に連動する商品を複数持っても、分散は増えません。

2. コスト(信託報酬)

指数が同じなら、ここで差が出る

毎年、確実に差し引かれます。将来のリターンは分かりませんが、コストは分かります。同じ指数に連動する商品同士なら、ここが実質的にほぼ唯一の差になります。

  • 年率0.1%と年率1%では、30年で結果が大きく変わります。0.9%の差が毎年複利で効くためです。
  • ファンド・オブ・ファンズ方式(別のETFを通じて投資する形)では、投資先のETFの経費率も加わります。表示されている信託報酬だけでは実質コストが分かりません。
  • 「実質コスト」は運用報告書で確認できます。売買委託手数料などが加わるため、信託報酬より少し高くなります。
  • 海外ETFでは、経費率のほかに為替手数料と売買手数料がかかります。

3. 純資産総額と、その増減

続くかどうかに関わる

規模が小さいまま資金が流出していると、繰上償還(運用の途中終了)のリスクがあります。強制的に売却されると、自分の意図しないタイミングで課税が発生します。

  • 金額そのものより、増えているか減っているかの傾向のほうが重要です。
  • 目論見書には繰上償還の条件(「受益権口数が◯口を下回った場合」など)が書かれています。
  • 本サイトは個別の商品を挙げません。純資産総額は日々変動するものでもあるので、各ファンドの公式ページと最新の交付目論見書でご確認ください。

4. 連動精度(トラッキング)

同じ指数の中で見る

指数にどれだけ忠実に連動できているか。コストが低くても、連動が下手なら意味がありません。

  • 運用報告書に、指数との差(トラッキングディファレンス)が記載されています。
  • 設定からの期間が短いファンドは、この実績データが乏しいことになります。
  • 実際には、低コストのインデックスファンド同士でこの差が判断を左右することは多くありません。

5. 分配方針

使い方によって効き方が変わる

分配金を出すか、再投資するか。課税のタイミングが変わるため、課税口座では結果に差が出ます。

  • 分配金が出ると、そのぶん基準価額は下がります。分配は「増えた分」ではなく「一部を現金化したもの」です。
  • 課税口座では、分配のたびに課税されます。再投資型のほうが税の繰り延べが効きます。
  • ETFは分配金を出すのが一般的で、再投資は自分で行う必要があります。
  • 取り崩し期に入ると、判断を減らせるという意味で分配型に合理性が出てきます。局面によって答えが変わります。

6. 為替ヘッジの有無

別物として分けて見る

外貨建ての資産を持つとき、為替の変動を打ち消すかどうか。ヘッジにはコストがかかります。

  • ヘッジのコストは、おおむね2つの通貨の短期金利の差になります。金利差が大きいほど高くつきます。
  • 株式は長期で見ると為替の影響が相対的に小さくなるため、ヘッジなしが選ばれることが多い部類です。
  • 債券は期待リターンが小さいぶん、為替の変動が結果を大きく左右します。ヘッジありを選ぶ考え方があります。

7. 口座で取り扱いがあるか

最後に確かめる

どれだけ優れていても、自分の口座で買えなければ意味がありません。

  • NISAのつみたて投資枠で買えるかどうかは、金融庁の基準を満たしているかで決まります。ETFは原則として成長投資枠のみです。
  • 積立の設定ができるか、クレジットカード決済に対応しているかなども、続けやすさに関わります。
  • 海外ETFは、取扱いのある証券会社が限られます。

見なくてよいもの

  • 過去1年・3年のリターン — 期間の取り方で印象が大きく変わります。同じ指数に連動するファンド同士なら、差はほぼコストと連動精度で説明できます。
  • ランキング — 何を基準に並べたのか、誰が作ったのかによって順位が変わります。売れている順は、良い順ではありません。
  • 「人気」「注目」 — 多くの人が買っていることは、自分に合っていることを意味しません。

結局のところ

広く分散された低コストのインデックスファンドであれば、どれを選んでも結果は大きくは変わりません。ここで悩んで始められないほうが、はるかに大きな損失になります。

むしろ効くのは、いくら積み立てるかと何年続けるかです。商品選びは、その前提を整えたあとの、最後の一歩にすぎません。

大事なのは、いつ買うかより、どれだけ長く持つか。

なぜ: 値上がりの大部分は、ごく限られた日数に集中して起こります。相場から離れている期間があると、その日を取り逃がす確率が上がります。底を当てるより、居続けるほうが再現性があります。

個別の商品名は挙げていません。ここに書いた項目は、どれも各ファンドの交付目論見書と運用報告書で確かめられます。数字は改定されるので、見るのは常に最新のものです。

配分そのものの考え方はアセットアロケーション、「全世界株式1本にするか」といった論点は判断が分かれる論点で扱っています。