用語集
意味を書くだけでなく、誤解されやすい語には「どう誤解されやすいか」も書いています。定義を覚えるより、そちらのほうが役に立つことが多いからです。
こども向けの言い換えについて
いくつかの語には「やさしい言い方」を付けています。授業でそのまま使えるようにするためです。こども向けページもあわせてご覧ください。
基本
- 元本がんぽん
自分が出したお金そのもの。運用によって増えた分(運用収益)とは区別します。
やさしく言うと: じぶんが出したお金のこと。ふえた分はふくみません。
- 複利ふくり
利息を元本に組み入れ、その合計に対して次の利息がつく仕組み。期間が長いほど効果が大きくなります。
やさしく言うと: ふえた分にも、またりそくがつくこと。ころがすほど大きくなる雪だるまみたいなもの。
誤解しやすいところ: 借金にも同じように働きます。しかも借入金利のほうが高いので、そちらのほうが速く膨らみます。
- 単利たんり
元本に対してだけ利息がつく仕組み。利息が元本に組み入れられません。
やさしく言うと: さいしょのお金にだけ、りそくがつくこと。
- 名目と実質めいもくとじっしつ
名目は表示されている金額そのもの、実質は物価の変動を除いた値です。給料が3%上がっても物価が3%上がっていれば、実質では変わっていません。
やさしく言うと: 「いくら」で見るのが名目。「なにが買えるか」で見るのが実質。
誤解しやすいところ: この区別がないと、「減っていないから損していない」という誤解が生まれます。預金は名目では減りませんが、物価が上がれば実質では目減りします。
- 人的資本じんてきしほん
これから働いて稼ぐ力を、資産とみなす考え方。給与は、この資産から生まれるキャッシュフローと読み替えられます。
誤解しやすいところ: 若いうちは金融資産が小さくても、人的資本は大きい状態です。収入が安定しているか変動するかで、金融資産側の配分の考え方が変わります。
- キャッシュフローきゃっしゅふろー
一定の期間に入ってくるお金と出ていくお金の流れ。資産の残高(ストック)とは別の概念です。
やさしく言うと: お金の出入り。お風呂にたまっている量ではなく、蛇口と排水口から流れる量のほう。
- 生活防衛資金せいかつぼうえいしきん
急な出費や収入減に備えて、すぐ引き出せる形で持っておく現金。生活費の3か月から1年分が目安とされます。
誤解しやすいところ: 「守り」ではなく「投資をやめないための装置」です。これがないと、相場が悪いときに資産を売ることになります。
リスクと分散
- リスクりすく
結果のばらつきの大きさ(統計でいう標準偏差)。上にも下にもふれる、その幅のことです。
やさしく言うと: 「あぶない」という意味ではなく、「どれくらいブレるか」という意味。
誤解しやすいところ: 日常語の「危険」とは意味がちがいます。ここを取りちがえると、あとの話がすべてずれます。
- リターンりたーん
投資から得られる収益。値上がり益と、配当・分配金・利息を合わせたものです。
誤解しやすいところ: リスクと対になっています。高いリターンが期待できるものは、必ず大きなふれ幅を持ちます。
- 分散投資ぶんさんとうし
値動きの異なる複数の資産に分けて投資すること。期待リターンをほとんど落とさずに、全体のふれ幅を小さくできます。
やさしく言うと: ぜんぶ1つに賭けないこと。1つ失敗しても、ほかが残る。
誤解しやすいところ: 分散で消せるのは個別の企業に固有のリスクだけです。市場全体が下がるリスクは消せません。「分散すれば安全」ではありません。
- アセットアロケーションあせっとあろけーしょん
資産をどの種類にどれだけ配分するか。株式・債券・現金などの比率を決めることです。個別の商品選びより結果への影響が大きいとされます。
- リバランスりばらんす
値動きで崩れた資産の配分を、決めた比率に戻すこと。
誤解しやすいところ: 目的はリターンを高めることではなく、自分が決めたリスクの水準を保つことです。頻繁にやると税とコストが効果を上回ることがあります。
- ボラティリティぼらてぃりてぃ
価格の変動の大きさ。リスク(標準偏差)とほぼ同じ意味で使われます。
- ドルコスト平均法どるこすとへいきんほう
一定の金額を定期的に投資し続ける方法。価格が高いときは少なく、安いときは多く買うことになります。
誤解しやすいところ: 「必ず有利になる方法」ではありません。まとまった資金がある場合、期待値では一括投資のほうが有利になりやすいことが知られています。積立が支持されるのは、続けやすいからです。
コスト
- 信託報酬しんたくほうしゅう
投資信託を保有している間、毎日差し引かれる運用管理費用。年率で表示されます。
誤解しやすいところ: 将来のリターンは不確実ですが、このコストは確実に引かれます。同じ指数に連動する商品同士なら、ここが実質的な差になります。
- 実質コストじっしつこすと
信託報酬に、売買委託手数料や監査費用などを加えた、実際にかかった費用の合計。運用報告書で確認できます。
誤解しやすいところ: 表示されている信託報酬より、通常は少し高くなります。
- 経費率けいひりつ
ETF における運用管理費用。投資信託の信託報酬にあたるものです。
- 為替手数料かわせてすうりょう
円と外貨を交換するときにかかる費用。海外ETFなどを外貨で売買する場合、往復で発生します。
制度・税
- NISAにーさ
運用益が非課税になる口座。2024年から恒久化され、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)の枠があります。
誤解しやすいところ: NISA口座内の損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除ができません。1人1口座までです。
- こどもNISAこどもにーさ
2027年1月からNISAの口座開設可能年齢の下限が撤廃され、18歳未満でも非課税口座を持てるようになります。18歳未満の間は年間60万円・非課税保有限度額600万円で、買えるのはつみたて投資枠と同じ投資信託です。18歳になる年から成人の枠へ自動的に切り替わります。
やさしく言うと: こどもでも、もうけに税金がかからない口座を持てるようになる制度です(2027年から)。
誤解しやすいところ: 「こどもNISA」は通称で、法令上は非課税口座に設けられる「未成年者特定累積投資勘定」です。18歳未満の間は原則として引き出せず、12歳以降も使途と本人の同意など要件があります。ジュニアNISAの保有分がここへ移るわけではありません。
- iDeCoいでこ
個人型確定拠出年金。掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税。受取時は退職所得控除・公的年金等控除の対象になります。
誤解しやすいところ: 原則60歳まで引き出せません。この制約は金額に表れないので、「60歳まで使わないと言い切れるお金か」で判断します。
- 譲渡益課税じょうとえきかぜい
上場株式等を売って得た利益にかかる税。所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%で、合計20.315%です。
- 特定口座とくていこうざ
証券会社が損益を計算してくれる課税口座。「源泉徴収あり」を選ぶと納税も代行されるため、確定申告が不要になります。
- 損益通算そんえきつうさん
利益と損失を相殺して、課税対象を減らすこと。上場株式等では、損失を3年間繰り越すこともできます。
誤解しやすいところ: NISA口座内の損失はこの対象になりません。ここはNISAの数少ない不利な点です。
- 所得控除しょとくこうじょ
課税所得を減らす仕組み。iDeCoの掛金、生命保険料、医療費などが対象です。軽減額は課税所得の水準(限界税率)によって変わります。
- 高額療養費制度こうがくりょうようひせいど
1か月の医療費の自己負担に上限を設ける公的な仕組み。上限は所得と年齢で決まります。
誤解しやすいところ: 民間の医療保険を検討する前に、この制度で何が賄われるかを確認する必要があります。制度の見直しが議論されているため、最新の情報をご確認ください。
- 遺族年金いぞくねんきん
被保険者が亡くなったときに遺族が受け取る公的年金。遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。
誤解しやすいところ: 大きな死亡保障の民間保険に入る前に、まずこの金額を確認してください。必要な保障額が想像よりかなり小さくなることがあります。
- 課税所得かぜいしょとく
税額を計算する元になる金額。給与だけの場合、年収から給与所得控除を引き、さらに各種の所得控除を引いた残りです。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた額にあたります。
誤解しやすいところ: 年収とは違います。iDeCoの所得控除の効果や、扶養の判定は、年収ではなくこちらで決まる部分があります。
- 年末調整ねんまつちょうせい
給与から天引きされてきた所得税を、1年分の正しい税額に精算する手続き。勤務先が行います。iDeCoの掛金を給与天引き以外で払っている場合は、届いた払込証明書をここで提出します。
誤解しやすいところ: 医療費控除やふるさと納税のワンストップ特例が使えない場合など、年末調整では終わらず確定申告が必要になることがあります。
- 企業型DCきぎょうがたでぃーしー
勤務先が掛金を出し、加入者が運用する年金制度(企業型確定拠出年金)。運用する商品は自分で選びます。
誤解しやすいところ: 入社時に何も選ばないと預金のままになっていることがあります。iDeCoの拠出限度額は、この事業主掛金を差し引いた残りになります。
- マッチング拠出まっちんぐきょしゅつ
企業型DCで、事業主の掛金に加えて加入者本人が掛金を上乗せする仕組み。本人の掛金は所得控除の対象です。
誤解しやすいところ: マッチング拠出とiDeCoの併用はできず、勤務先の規約に沿ってどちらかを選びます。どちらが有利かは掛金の額と課税所得によります。
- 自動移換じどういかん
企業型DCの加入者が退職したあと、期限までに移換の手続きをしないと、資産が国民年金基金連合会に移される状態。
誤解しやすいところ: この間は運用されず、管理手数料だけがかかります。あとから移すことはできるので、心当たりがあれば確認してください。
- 年収の壁ねんしゅうのかべ
扶養の範囲を超えると世帯の手取りの増え方が変わる、と言われる境目のこと。税の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)と、社会保険の扶養(自分が健康保険・厚生年金に加入するか)という、性質の違う2つが同じ言葉で語られています。
誤解しやすいところ: 税の側は控除が段階的に減るので、超えた瞬間に手取りが逆転する作りではありません。社会保険の側は保険料の負担が新しく発生する一方、将来の年金や傷病手当金などの保障が増えます。加入の条件は勤務先の規模などで変わるので、金額だけでは決まりません。
- 第3号被保険者だいさんごうひほけんしゃ
厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者の、国民年金での区分。保険料を自分で納めなくても、国民年金の被保険者として扱われます。
誤解しやすいところ: 課税所得がない場合、iDeCoの掛金の所得控除による軽減は生じません。運用益の非課税は残りますが、口座管理手数料は課税所得の有無にかかわらずかかります。
- 団体信用生命保険だんたいしんようせいめいほけん
住宅ローンの契約者が亡くなったときなどに、ローンの残債が保険で返済される仕組み。団信と略されます。
誤解しやすいところ: 住居費という大きな固定費が、すでに保障されている状態にあたります。必要保障額を数えるときにここを入れ忘れると、必要な死亡保障を過大に見積もります。
- 所得代替率しょとくだいたいりつ
現役世代の手取り収入に対する年金額の比率。公的年金の給付水準を示す指標です。2024年度は61.2%でした。
誤解しやすいところ: これが下がることは「年金がもらえなくなる」という意味ではありません。現役世代の手取りに対する比率が下がる、という意味です。
商品
- インデックスファンドいんでっくすふぁんど
特定の指数(TOPIX、S&P500など)に連動することを目指す投資信託。運用に人の判断が入らないぶん、コストが低くなります。
- アクティブファンドあくてぃぶふぁんど
運用担当者が銘柄を選び、指数を上回ることを目指す投資信託。
誤解しやすいところ: 長期では、多くのアクティブファンドが指数を下回るという研究結果が繰り返し報告されています。信託報酬も高くなる傾向があります。
- ETFいーてぃーえふ
証券取引所に上場している投資信託。株式と同じように市場で売買します。分配金を出すのが一般的です。
誤解しやすいところ: NISAではつみたて投資枠の対象外で、成長投資枠のみです。分配金の再投資は自分で行う必要があります。
- 分配金ぶんぱいきん
投資信託やETFから定期的に支払われるお金。
誤解しやすいところ: 分配金が出ると、そのぶん基準価額は下がります。「増えた分」ではなく「一部を現金化したもの」です。元本を取り崩して支払う分配(元本払戻金)が含まれることもあります。
- 基準価額きじゅんかがく
投資信託の値段。通常は1万口あたりの金額で表示されます。
- 純資産総額じゅんしさんそうがく
そのファンドが預かっている資産の合計額。
誤解しやすいところ: 規模が小さいまま資金が流出していると、繰上償還(運用の途中終了)のリスクがあります。金額そのものより、増減の傾向のほうが重要です。
- 為替ヘッジかわせへっじ
外貨建て資産を持つときに、為替の変動を打ち消す仕組み。
誤解しやすいところ: コストがかかります。おおむね2つの通貨の短期金利の差にあたるため、金利差が大きいほど高くつきます。
- 変額保険へんがくほけん
払った保険料の一部が運用され、その成果によって受取額が変わる保険。保障と運用を1つの商品にまとめたものです。
誤解しやすいところ: 運用の部分は投資に近いのですが、保障の対価と手数料が引かれた残りが運用されます。内訳が示されないことがあり、実質的なコストを比べにくくなります。
出口
- 取り崩しとりくずし
積み上げた資産を、生活費などのために計画的に使っていくこと。
- リターンの順序の影響りたーんのじゅんじょのえいきょう
平均リターンが同じでも、値動きの順番によって結果が変わること。取り崩し期に強く効きます。
誤解しやすいところ: 積立期には順番はほとんど結果を変えません。取り崩し開始直後に大きく下げると、回復する元本そのものが小さくなるため、その後の資産の持ちに強く影響します。
- 4%ルールよんぱーせんとるーる
資産の4%ずつ取り崩せば30年もつ、という目安。米国のトリニティ・スタディという研究に由来します。
誤解しやすいところ: 米国の歴史的データに基づき、30年前提で、税・手数料・為替・公的年金を考慮していません。日本でそのまま使うには留保が必要です。
- 繰下げ受給くりさげじゅきゅう
公的年金の受給開始を遅らせること。1か月あたり0.7%ずつ年金額が増えます(最大75歳まで、84%増)。
誤解しやすいところ: 早く亡くなった場合は繰り下げないほうが受取総額は多くなります。年金額が増えると税や社会保険料も増えます。
- 退職所得控除たいしょくしょとくこうじょ
退職金やiDeCoを一時金で受け取るときに、課税対象から差し引ける金額。20年までは年40万円、超過分は年70万円です。
- FIREふぁいあ
Financial Independence, Retire Early の頭文字。資産からの収入で生活費を賄える状態と、早期に退職することを指します。
誤解しやすいところ: この2つは別のことです。「働かなくても暮らせる選択肢がある」ことと「実際に働くのをやめる」ことは分けて考えられます。
経済
- インフレいんふれ
世の中の物価が全体として上がっていくこと。お金の価値が下がることと同じ意味です。
やさしく言うと: ものの値段が上がること。同じお金で買えるものが減る。
- デフレでふれ
物価が全体として下がっていくこと。
誤解しやすいところ: 物価が下がると人は買い控え、企業の売上が減り、給料も減るという循環が起きやすくなります。「安くなるから良い」とは限りません。
- 消費者物価指数しょうひしゃぶっかしすう
家計が購入する商品やサービスの価格の変動を測る指標。総務省統計局が毎月公表しています。
- r > gあーるだいなりじー
資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るという、ピケティが『21世紀の資本』で示した観察。
誤解しやすいところ: 「投資すれば儲かる」という主張ではありません。社会全体の資産分布についての分析であり、解釈には議論があります。
- 賦課方式ふかほうしき
現役世代が納めた保険料を、そのときの高齢者の給付に充てる年金の仕組み。日本の公的年金はこの方式です。
誤解しやすいところ: 「自分が払った分が積み立てられて返ってくる」貯金ではありません。だから人口構成の変化が制度に直接影響します。
- GPIFじーぴーあいえふ
年金積立金管理運用独立行政法人。公的年金の積立金を運用する組織で、基本ポートフォリオと運用実績を公開しています。
この用語集の方針
用語集は、意味を並べただけでは役に立ちません。実際に判断を誤らせるのは、言葉を知らないことより、知っているつもりで意味を取りちがえていることだからです。
そのため、誤解されやすい語には「誤解しやすいところ」を付けました。たとえば「リスク」を危険という意味で覚えていると、そのあとの説明がすべてずれます。「分配金」を増えた分だと思っていると、商品の比較を誤ります。
載っていない言葉や、説明が分かりにくい箇所があれば、tanetochie@gmail.comまでお知らせください。