3. ほしいもの と 必要なもの
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 中学年小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(ほしい? それとも、いる?)のほうを配ってください。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 機会費用は「あきらめたもののうち、いちばん価値が高いもの」
- 経済学では、ある選択をしたときに手放した選択肢の価値を機会費用と呼びます。単に「お金を使った」ことではなく、「そのお金で買えたはずの別のもの」が費用だという見方です。この先の学年でも出てくる考え方です。小学生には用語より、選ぶことは同時にあきらめることだ、という感覚を残すほうが効きます。
- ニーズとウォンツの線は人によって動きます
- 同じ品物でも、その人の状況によって必要かどうかは変わります(通学に自転車が要る人と要らない人)。この線引きに唯一の正解を与えると、家庭環境の違う児童を傷つけます。割れたときは「なぜ割れたのか」を扱い、正解を決めないでください。
- 広告は「ほしい」を「必要」に近づける仕事をしています
- 広告が悪だという話ではありません。ただ、必要だと感じさせる工夫がされていることを知っておくと、判断の質が上がります。この視点は単元10の「誰が得をするか」に直接つながります。本サイトが広告と本文を分け、こども向けページに広告を出さない方針をとっているのも同じ理由です。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. ほしいものを買うのは、いけないことなの?
- いけないことではありません。この授業は我慢を教えるものではなく、限られたお金の中で自分が何を選んだかを自覚できるようにするものです。「ウォンツを買うな」ではなく「選んだと分かって買おう」と伝えてください。
- Q. 家によって「必要なもの」がちがうのはなぜ?
- 住んでいる場所、通学の方法、家族の人数など、条件がちがうからです。ここは慎重に扱ってください。特定の児童の家庭の状況が話題にならないよう、答えは一般的な条件の違いにとどめます。
- Q. あきらめたものは、損したことになるの?
- 損というより、選んだことの裏側です。5,000円で本を買えば、その5,000円で買えたはずのものは手に入りません。どちらを選んでも、選ばなかったほうは手放しています。だから「何をあきらめたか」まで見て決めると、納得しやすくなります。
伝え方で気をつけること
- 「ほしいもの=むだづかい」という価値づけをしないでください。ウォンツを否定すると、生活の楽しみを否定することになります。
- 実在の家庭の事情を例に出さないでください。品物カードと架空の5,000円で完結させます。
- 機会費用という用語を覚えさせることを目的にしないでください。感覚が残れば十分です。
この時間のねらい
- ニーズ(必要なもの)とウォンツ(ほしいもの)を区別できる。
- 限られたお金の中で優先順位をつける経験をする。
- 「選ぶ」ことは同時に「あきらめる」ことでもあると気づく(機会費用)。
学習指導要領との対応
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 買物のしくみ、物や金銭の計画的な使い方
- 小学校 道徳: 節度、節制
- 小学校 特別活動: 自分で決めることと、その責任
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「無人島に3つだけ持っていけるなら何を持っていく?」と問いかけ、必要とほしいの差を意識させる。 |
| 展開1 | 12 | 20枚ほどの品物カード(食料、衣類、ゲーム、薬、お菓子、教科書など)を、「ないと困る」「あったらうれしい」に分ける。グループによって分け方が割れるものを取り上げ、なぜ割れたのかを話し合う。 |
| 展開2 | 17 | 架空の予算(例: 5,000円)を配り、カードから買うものを選ばせる。全部は買えない。何をあきらめたか、なぜそれをあきらめたかを発表させる。 |
| まとめ | 8 | 機会費用という言葉を紹介する。「選ぶ=あきらめる」であり、あきらめたもののことも考えると、選び方が変わることを確認する。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- 品物カード20枚ほど(食料・衣類・ゲーム・薬・お菓子・教科書など。品名と値段を書いたもの。教員が作成)
- ワークシートの印刷(クラス人数分)
ワークシート:5,000円の使いみち
- 買いたいものを、ねだんと いっしょに5つ書きます。
- 合計を計算します。5,000円をこえていたら、どれかを あきらめます。
- あきらめたものと、あきらめた理由を書きます。
- 1か月後、そのえらび方で よかったかを ふり返って書きます(後日)。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- 同じものでも、人によって「必要」か「ほしい」かが変わるのはなぜでしょう。
- 広告は、「ほしい」を「必要」だと思わせようとすることがあります。どんな工夫がされているでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | ニーズ(必要なもの)とウォンツ(ほしいもの)を区別して説明できる。 | 展開1のカード分類とワークシート①。 |
| 思考・判断・表現 | 限られた金額の中で優先順位をつけ、あきらめた理由を言葉にできる。 | ワークシート③の記述。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 選ぶことがあきらめることでもある(機会費用)と気づき、自分の判断を振り返ろうとしている。 | ワークシート④(後日)と話し合いの問い①。 |
指導上の配慮
- 家庭によって使えるお金は大きくちがいます。「自分の家のおこづかい」を発表させるのではなく、架空の予算で統一してください。
- 機会費用は、この先の学年でも出てくる考え方です。言葉より体験を先に置くと定着します。児童向けの本文では「あきらめたほう」という言い方を先に置いています。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/needs-and-wants/