4. ものの ねだんは どう決まるか
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(ねだんは、どうやって決まるの?)のほうを配ってください。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 需要と供給は「量」で決まります
- 価格が上がると供給は増え需要は減る、価格が下がると逆になる。この2本の曲線が交わるところで価格と数量が決まる、というのが基本の整理です。この先の学年の教科書にある需要曲線・供給曲線の図と同じ内容です。小学校では、図ではなく模擬オークションの体験で扱います。
- インフレには原因のちがいがあります
- 需要が強くて起こるもの(ディマンドプル)と、原材料費などのコストが上がって起こるもの(コストプッシュ)があります。近年の日本の物価上昇には、資源価格の上昇と円安によるコストプッシュの要素が大きいと説明されることが多いです。「景気がよいから上がっている」とは限りません。
- 「物価が2%上がる」ことが目標にされる理由
- 日本銀行は物価安定の目標を2%としています。ゼロを目標にしないのは、統計上の上振れがあること、金利を下げる余地を残すこと、そしてデフレになると人が買い控えて経済が縮むことが理由として挙げられます。児童に聞かれたら「少し上がるくらいがちょうどよいとされている」と答えて差し支えありません。
- 実質と名目のちがい
- 「名目」は表示されている金額そのもの、「実質」は物価の変動を除いた値です。給料が3%上がっても物価が3%上がっていれば、実質では変わっていません。この区別は、この先すべての単元に効いてきます。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. 物価が上がるのは悪いこと?
- 一概には言えません。賃金も同じだけ上がっていれば、生活は変わりません。問題になるのは、物価の上昇に賃金が追いつかないときです。逆に物価が下がり続けると、人はものを買わなくなり、企業の売上が減り、給料も減るという循環が起きます。
- Q. なぜ日本は長い間、物価が上がらなかったの?
- 複数の要因が指摘されており、経済学者の間でも意見が分かれています。人口減少、賃金が上がりにくい仕組み、企業が値上げを避けてきた慣行など、いくつもの説明があります。「はっきりした答えが1つあるわけではない」と正直に伝えて構いません。
- Q. なぜ給料は上がらないの?
- ここも決着していない論点です。よく挙げられる説明として、(1) 一度上げた賃金は下げにくいため、企業が先行きの不確実性を前に昇給に慎重になる、(2) 転職が広がりにくい環境では、賃上げをしなくても人が離れにくい、(3) 値上げを避ける慣行が続くと、原資そのものが増えない、といったものがあります。ほかに、非正規雇用の比率の変化や、生産性の伸びの鈍さを挙げる説明もあります。どれか1つが原因だと断定せず、「複数の説明があり、重なっていると考えられている」と伝えるのが正確です。児童から「もうかっている会社なら上げられるのでは」という反論が出たら、それは有効な指摘として受け止めてください。
- Q. お菓子の量が減っているのは値上げなの?
- はい。価格が同じでも内容量が減れば、実質的な値上げです。統計上も、消費者物価指数は量の変化を調整して計算されています。児童が体感している例なので、導入に使いやすい話題です。
伝え方で気をつけること
- 「インフレだから投資しないと損」という結論に飛ばないでください。この単元では「お金の価値は変わりうる」という事実の確認までにとどめます。
- 将来の物価を予測するような発言は避けてください。過去の実績データと、日本銀行の目標水準を示すまでです。
この時間のねらい
- ねだんが、ほしい人の数と、品物の数で決まることを説明できる。
- ものの ねだんが上がると、同じお金で買える量がへることを、計算でたしかめられる。
- お金の ねうちは、いつも同じではないことに気づく。
学習指導要領との対応
- 小学校 社会科(第3学年・第4学年): 販売の仕事、店のくふう
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 買物のしくみ、物や金銭の計画的な使い方
- 小学校 算数(第4学年): 折れ線グラフ、(第5学年): 割合
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「1年前と今で、値段が変わったと思うものは?」と問いかける。お菓子の内容量が減っている例も見せる。 |
| 展開1 | 12 | 教室内で模擬オークション。教員が用意した架空の品物カードを1枚だけ出し、買いたい人が多いと値が上がることを体験させる。次に同じカードを10枚に増やし、値が下がることを見せる。 |
| 展開2 | 17 | 消費者物価指数の実データ(2013〜2025年)を配り、折れ線グラフに起こさせる。2020年を100としたとき2025年が111.9であることを読み取り、「1,000円で買えるものがどうなったか」を計算させる。 |
| まとめ | 8 | 「お金のねうちは、いつも同じではない」ことを確認する。ためたお金の意味が変わってくることに触れて終わる。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- 消費者物価指数の表(本サイトの「物価」のページから印刷。基準日を確認すること)
- 方眼を入れたワークシートの印刷(クラス人数分)
- 電卓(1人1台、またはグループに1台)
- 模擬オークション用の架空の品物カード(教員が作成。実在の商品名は使わない)
ワークシート:1,000円の重さをはかる
- 配られた ねだんの表を、折れ線グラフにします。
- 2020年を100としたとき、2025年はいくつになっていますか。
- 2020年に1,000円で買えたものは、2025年にはいくら いりますか。(1,000 × 2025年の数 ÷ 100)
- 2020年の1,000円をそのまま持っていたら、2025年にはいくら分の買い物ができますか。
- 計算してみて、思ったことを書きます。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- ものの ねだんが上がるのは、悪いことばかりでしょうか。はたらいてもらえるお金も、同じだけ上がったらどうでしょう。
- ねだんが下がりつづけると、人はものを買わなくなると言われます。それはなぜでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | ものの値段がそろって上がることと、そのときの暮らしへの影響を説明できる。 | ワークシート⑤の記述。 |
| 思考・判断・表現 | 指数を使って、同じ買い物に必要な金額の変化を計算できる。 | ワークシート③④の計算。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 値段の上昇を一面的に悪いことと決めつけず、立場によって見え方が変わることを考えようとしている。 | 話し合いの問い①での発言。 |
指導上の配慮
- 実データは本サイトの統計ページから印刷できます。出典は総務省統計局の消費者物価指数です。
- 「インフレ」「デフレ」という用語は、児童が値段の動きを実感してから紹介してください。用語を先に置くと、体験のほうが薄れます。
- 「値段が上がるから投資すべき」と短絡させないでください。ここでは「お金のねうちは変わる」という事実の確認までにとどめます。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/prices-and-inflation/