5. 銀行と 利子のしくみ
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(銀行は、なにをしているの?)のほうを配ってください。読み終えたあとの「ふりかえってみよう」も、そちらのページにあります。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 銀行の3大業務
- 預金(お金を預かる)、貸出(お金を貸す)、為替(送金・決済)の3つです。利ざや(貸出金利と預金金利の差)が収益の柱のひとつです。「預かったお金を貸している」という説明は、この構造の核心です。
- 信用創造
- 銀行が貸し出すと、その資金が預金として戻り、また貸し出される。これを繰り返すことで、世の中の預金の総額は元の現金より大きくなります。これを信用創造といいます。この先の学年で扱われます。小学生には難しいので、ロールプレイでお金が「回っている」ことを見せるだけで十分です。
- なぜ貸出金利のほうが高いのか
- 3つの理由があります。①貸したお金が返ってこないリスクを負っている ②審査や回収のコストがかかる ③その差額が銀行の収益になる。「銀行がずるいから」ではなく、リスクを引き受けた対価という説明ができると、単元8のリスクとリターンにつながります。
- 実質年率と手数料
- 「実質年率」は手数料を含めた年あたりの負担率です。分割払いの「手数料」として提示されると年率が見えにくくなりますが、年率に直すと高いことがあります。利息制限法により、上限金利は元本の額に応じて年15〜20%と定められています。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. 銀行にお金を預けたら、そのお金は金庫にあるの?
- 一部は手元に置いていますが(準備預金)、大部分は貸し出されています。全員が同時に引き出しに来ることはない、という前提で成り立っています。逆に、その前提が崩れると取り付け騒ぎになります。
- Q. 銀行がつぶれたら預けたお金はどうなるの?
- 預金保険制度によって、1金融機関につき預金者1人あたり元本1,000万円と破綻日までの利息までが保護されます(金融庁の資料で2026年9月10日に確認した額です)。これを超える部分は、破綻した金融機関の財産の状況によって、一部戻らないことがあります。額は法令で決まっていて、改正で変わります。数字を暗記して答えず、単元の末尾の出典を見せてください。
- Q. リボ払いって便利じゃないの?
- 毎月の支払額を一定にできる点は便利です。ただ、残高に対して年15%前後の手数料がかかり、支払額が少ないほど残高が減らず、期間が延びて総額が膨らみます。「毎月の支払いが軽い」ことと「支払総額が少ない」ことは別だ、という整理が要点です。
伝え方で気をつけること
- 特定の金融機関やカード会社を名指しで批判する形にしないでください。仕組みとして扱います。
- 「借金は悪」という価値づけは避けてください。家庭に借入がある児童がいます。金利の水準と目的で判断する、という整理にとどめます。
- 実際の金利水準は変動します。授業で数値を使う場合は、その時点の水準をご確認ください。
この時間のねらい
- 銀行が、あずかったお金を、ひつような人に貸していることを説明できる。
- あずけると利子がつき、借りると利子をつけて返すことが分かる。
- 借りたときにつく利子のほうが、あずけたときより ずっと多いことに気づく。
学習指導要領との対応
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 物や金銭の大切さ、計画的な使い方
- 小学校 算数(第5学年): 割合、百分率
- 小学校 総合的な学習の時間: くらしを支えるしくみを調べる
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「銀行に預けたお金は、そのまま金庫で眠っていると思う?」と問いかける。 |
| 展開1 | 14 | 預ける人・銀行・借りる人の3役に分かれて、お金の流れをロールプレイする。お金が「回っている」ことを見えるようにする。 |
| 展開2 | 15 | 計算する。①1,000円を年0.3%で1年預けたときの利子 ②1,000円を年20%(利息制限法の上限)で1年借りたときの利子。端数は「1円より 下は 切りすてます」で統一する。桁のちがいに気づかせる。割合の学習が済んでいない場合は、①は3円、②は200円と示してから比を考えさせる。 |
| まとめ | 8 | 「借りると、返す金額は借りた金額より多くなる」ことを確認する。借りる前に返す金額をたしかめる、という構えに落として終わる。最後に、こども向けページの「ふりかえってみよう」3項目を配り、声に出して読み合わせる(できた/できないの採点にはしない)。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- 電卓(1人1台、またはグループに1台)
- ワークシートの印刷(クラス人数分)
ワークシート:利子を計算する
- 1,000円を1年あずけると、利子はいくらつきますか。(年0.3%。1円より 下は 切りすてます)
- 1,000円を1年かりると、利子はいくらつきますか。(年20%。決まりで ゆるされている いちばん高い利子です)
- ②は①の何倍ですか。
- かりたまま3年返さないと、返す金額はいくらになりますか。(毎年、ふえた分にも利子がつくとして計算します)
- 計算してみて、気づいたことを書きます。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- なぜ、かりるときの利子のほうが、あずけるときより多いのでしょう。
- 「今すぐ手に入る」ことと「あとで多く返す」ことは、どうやってくらべればよいでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 銀行が預金を集めて貸し出していること、利子がなぜつくかを説明できる。 | 展開1の発言とワークシート⑤。 |
| 思考・判断・表現 | 預けるときと借りるときの利子の差を計算し、借りる側から見た重さを数字で示せる。 | ワークシート①〜④の計算。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 借りることを善悪で判断せず、返す金額をたしかめてから決めるという構えを持とうとしている。 | 話し合いの問い②での発言。 |
指導上の配慮
- 預金の金利は、日本銀行が公表している普通預金の平均(0.306%・2026年8月19日時点)です。児童には0.3%と示していますが、1,000円に掛けた答えは どちらでも3円になります。金利は動くので、授業の前に基準日を確認してください。
- 特定の金融機関やサービスを名指しで批判する形にしないでください。仕組みとして扱います。
- 家庭に借入がある児童がいる可能性に配慮し、「借金は悪」という価値づけは避け、返す金額で判断するという整理にしてください。
- 年20%は利息制限法の上限(元本10万円未満の場合)で、実際の水準ではありません。この段階では商品名を出さず、「借りると返す金額が増える」という関係だけを扱ってください。18歳成年や多重債務までは踏み込みません。
出典
- [1]日本銀行「主要時系列統計データ表 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等(普通預金)(新しいタブで開きます)」(利用条件: 出所を明記すれば転載・複製が可能。商用目的・画像等は事前に相談が必要(新しいタブで開きます))普通預金のデータコードは IR02'DLDR121N、単位は年%、収録開始は2022年4月です。同じ統計の解説ページは2022年3月末で資料の作成が止まっているため、数値そのものはこちらの時系列で公表されています。
- [2]デジタル庁 e-Gov法令検索「利息制限法 第1条(利息の制限)(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))元本10万円未満は年2割、10万円以上100万円未満は年1割8分、100万円以上は年1割5分。これを超える部分の利息の契約は無効。
- [3]金融庁「預金保険制度(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))一般預金等は預金者1人あたり1金融機関ごとに元本1,000万円までと破綻日までの利息等、決済用預金は全額が保護される。限度額の根拠は預金保険法第54条第2項(保険基準額を政令に委任)・同施行令第6条の3(本則。附則にも同じ条番号があるので混同しない)。決済用預金の全額保護は同法第54条の2。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/banks-and-interest/