6. ふえた分にも、ふえる
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(雪だるまは、ころがすほど大きくなる)のほうを配ってください。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 複利は等比数列そのものです
- 元本 P、年利 r で n 年後は P(1+r)^n。数学の等比数列・指数関数と同じ式です。この先の学年の数学に、そのままつながります。単利は P(1+rn) で、こちらは等差数列です。
- 72の法則の根拠
- 2倍になる年数 n は (1+r)^n = 2 を解いて n = ln2 / ln(1+r)。ln2 ≈ 0.693 で、r が小さいとき ln(1+r) ≈ r なので n ≈ 0.693/r。パーセント表示に直すと約69.3/r%となり、割り切れる数として72が使われます。中程度の利率で誤差が小さくなるよう選ばれた数字です。
- 「年5%」は保証ではありません
- ここが授業で最も注意すべき点です。計算例で使う利率は、複利の仕組みを示すための仮定であって、そのリターンが得られるという意味ではありません。過去の実績も将来を保証しません。必ず添えてください。
- 積立の場合の式
- 毎月 C を積み立てて月利 r で n か月なら、将来価値は C × ((1+r)^n − 1) / r です。年金終価係数と呼ばれます。小学生には式ではなく、シミュレーターを動かして見せるほうが伝わります。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. 年5%って、どこで得られるの?
- これは仮の数字です、と答えてください。特定の商品を挙げる必要はありません。「過去に世界の株式が平均でこれくらいだった時期がある」という言い方はできますが、将来の保証ではないことを必ず添えます。
- Q. 銀行の金利は0.001%とかだけど?
- そのとおりです。だから預金では複利の効果はほとんど出ません。72の法則で計算すると、2倍になるのに何万年もかかります。この計算を実際にさせると印象に残ります。
- Q. 早く始めたほうがいいなら、今すぐ始めるべき?
- 仕組みとしては時間が長いほど有利です。ただし、投資できるお金があること、使う予定がないこと、が前提になります。「早く始めるべきだ」と勧める形にはせず、「時間が効く」という事実の確認までにしてください。
伝え方で気をつけること
- 特定の金融商品や証券会社を紹介する形にしないでください。投資の勧誘と受け取られる可能性があります。
- 複利が借金にも同じように効くことを必ず扱ってください。片側だけ教えるのは不誠実です。
- 「投資しないと損」という結論に持っていかないでください。仕組みの理解が目的です。
この時間のねらい
- ふえた分にも利子がつくと、ふえ方がだんだん速くなることを、計算で示せる。
- 同じ ふやし方でも、年数が長いほど差が大きくなることを、表とグラフでたしかめられる。
- 「72の法則」を使って、2倍になるまでの およその年数を出せる。
学習指導要領との対応
- 小学校 算数(第5学年): 割合、百分率
- 小学校 算数(第6学年): 比例、文字を使った式
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 物や金銭の計画的な使い方
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「毎日1円ずつもらう」か「1円から始めて毎日2倍になる」か、1か月ならどちらを選ぶかを問う。後者が10億円を超えることを示す。 |
| 展開1 | 14 | 1,000円が毎年100円ずつ増える場合と、毎年10%ずつ増える場合の表を、10年分計算させる(電卓可)。差が開いていくことを数字で確認する。 |
| 展開2 | 15 | 同じ計算を30年分に延ばしたグラフを配り、線の形を観察させる。72の法則を紹介し、いくつかの割合で検算させる。 |
| まとめ | 8 | 同じ増え方が借りたお金にも効くことを確認する。単元5の「1,000円借りて1,150円返す」に戻り、こちらのほうが速いことを示す。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- 電卓(1人1台、またはグループに1台)
- 30年分の比較グラフ(本サイトの積立シミュレーターを投影して代替してもよい)
- ワークシートの印刷(クラス人数分。②は10年分の表の枠を用意する)
ワークシート:2つの ふえ方をくらべる
- 1,000円が毎年100円ずつふえるとして、10年後はいくらですか。
- 1,000円が毎年10%ずつふえるとして、1年ずつ表にして10年分を計算します。
- 10年後の差は、いくらですか。
- 30年後だと、差はどうなると思いますか。予想を書いてから、配られたグラフで たしかめます。
- 72の法則を使って、年3%・年6%・年9%で2倍になる年数を出します。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- なぜ「早く始めるほうがよい」と言われるのでしょう。グラフの形から説明してみましょう。
- この ふえ方が味方になるのは、どんなときでしょう。こまった相手になるのは、どんなときでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 2つの増え方の違いを計算で示し、72の法則でおおよその年数を見積もれる。 | ワークシート①②⑤の計算。 |
| 思考・判断・表現 | 年数が長いほど差が開く理由を、グラフの形と結びつけて説明できる。 | ワークシート④と話し合いの問い①。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 同じ増え方が借りたお金にも効くことに気づき、両側から捉えようとしている。 | 話し合いの問い②での発言。 |
指導上の配慮
- 「年10%で増やせる」と保証しているわけではない点を必ず添えてください。ここでは計算の仕組みを扱っています。
- 本サイトの積立シミュレーターを教室のスクリーンに映すと、条件を変えたときの動きをその場で見せられます。
- 割合の学習が済んでいない学級では、「10%」を「10分の1だけふえる」と言いかえてから始めると詰まりません。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/compound-interest/