7. ふれはばと もうけ
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(もうけと、危なさは、セットでやってくる)のほうを配ってください。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- リスク=標準偏差
- 金融でいうリスクは、リターンの標準偏差(ばらつきの大きさ)です。「損する可能性」ではなく「上下にどれだけ振れるか」です。この定義の転換が、この単元の最大のねらいです。
- 大数の法則
- サイコロを多く振るほど平均が期待値(3.5)に近づく、というのが大数の法則です。分散投資でばらつきが小さくなるのは、これと同じ原理です。数学Bの統計と直接つながります。
- 分散で消せるリスクと消せないリスク
- 個別の企業に固有のリスク(非システマティックリスク)は分散で消せます。一方、市場全体が下がるリスク(システマティックリスク)は分散では消せません。「分散すれば安全」という誤解を避けるために、この区別は押さえておいてください。
- なぜ左上が空白なのか
- 低リスクで高リターンの商品があれば、誰もが買うので価格が上がり、その結果リターンが下がって線上に戻ります。市場に参加者がいる限り、そういう機会は埋められていきます。これが「うまい話はない」ことの構造的な説明です。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. 分散すればぜったい損しないの?
- いいえ。分散で消せるのは、個別の会社に固有のリスクだけです。2008年のように世界中の株式が同時に下がることがあります。分散は「1つの失敗で退場しないため」の仕組みであって、下落を防ぐものではありません。
- Q. じゃあ、絶対もうかる方法はないの?
- ありません。あると言われたら、それは間違いか、うそです。この結論を児童が自分の言葉で言えるようになれば、この単元は成功です。
- Q. プロなら勝てるんじゃないの?
- 運用の専門家が市場平均を上回り続けるのは難しい、という研究が多数あります。長期では、多くのアクティブファンドが指数を下回るという結果が繰り返し報告されています。「プロでも難しい」と伝えて差し支えありません。
伝え方で気をつけること
- リスクを「危険」と訳したままにしないでください。この単元の核心が失われます。
- 「だから投資はやめたほうがいい」という結論にも、「だから投資すべき」という結論にも寄らないでください。関係の理解が目的です。
この時間のねらい
- リスクが「危ない」ではなく「ふれはば」であることを説明できる。
- 大きくふえるかもしれないものは、大きくへるかもしれないという関係に気づく。
- 分けると ふれはばが小さくなることを、実験でたしかめられる。
学習指導要領との対応
- 小学校 算数(第6学年): データの調べ方、平均
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 買物のしくみ、消費者としての自分の役割
- 小学校 総合的な学習の時間: 情報を確かめて判断する
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「ぜったいに減らなくて、1年で2倍になる方法がある」と言われたら信じるか、を問う。 |
| 展開1 | 14 | サイコロ実験。1個のサイコロを10回振って平均を出す。次に5個を同時に振って平均を出す。これを繰り返すと、5個のほうが平均のばらつきが小さいことが見える。これが分散の効果である。 |
| 展開2 | 15 | ふれはばの大きいものと小さいものを並べた表を見せ、ふれはばが大きいものほど、うまくいったときの伸びも大きいという関係を確かめる。本サイトの資産クラスの表を投影してもよい。 |
| まとめ | 8 | 「ぜったいもうかる」という言葉が出てきたら、いったん止まる。この構えに落として終わる。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- サイコロ(1グループにつき5個)
- 電卓(グループに1台)
- ワークシートの印刷(クラス人数分)
ワークシート:サイコロで たしかめる
- サイコロ1個を10回ふり、出た目を書いて平均を計算します。これを5回くり返します。
- 5つの平均のうち、いちばん大きい数と いちばん小さい数の差を書きます。
- 次に、サイコロ5個を同時にふって平均を出します。これも5回くり返します。
- 同じように、5つの平均の いちばん大きい数と いちばん小さい数の差を書きます。
- どちらの差が小さかったですか。それは なぜだと思いますか。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- 「ぜったいに そんをしない方法がある」と友だちに言われたら、どう答えますか。
- 分けると、大もうけも しにくくなります。それでも分けたほうがよいのは、なぜでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | リスクを「危険」ではなく「ふれはば」として説明できる。 | ワークシート⑤の記述。 |
| 思考・判断・表現 | サイコロの結果から、数を増やすとふれはばが小さくなることを説明できる。 | ワークシート②④の数値と⑤の理由。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 「ぜったい損しない」という誘いに対して、学んだ関係から自分の言葉で答えようとしている。 | 話し合いの問い①での発言。 |
指導上の配慮
- サイコロの実験は、数を増やすと平均のばらつきが小さくなることの体験です。この先の学年で学ぶ統計に、そのままつながります。
- リスクを「ばらつき」と定義することが、この単元のいちばんの狙いです。ここが伝わればほかは補足です。
- 「たまごを1つのかごに入れない」という言い方は、実際にかごとボールで見せると一度で伝わります。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/risk-and-return/