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タネとチエ

教育費はいくら見ておくか

教育費の総額として、大きな数字がひとつだけ示されているのをよく見かけます。ところが同じ「教育費」でも、学校に払うお金だけを数えているのか、塾や生活費まで入っているのかは資料によって違います。そのままでは自分の場合に当てはめられません。数字を1つ覚えるより、目にした数字が何を含んでいるかを見分けられるほうが、自分の桁には早く近づけます。

解説

最終更新 / 公開

同じ「教育費」でも、数えているものが違う

教育費の金額が資料によって大きく違うのは、どれかが間違っているからではありません。数えている範囲が違うだけです。少なくとも次の4つで変わります。

  • 学校に払うお金(授業料・入学料など)だけか、塾や習い事も含むか。
  • 通学のための生活費(下宿の家賃や食費)を含むか。
  • 何年ぶんを合計しているか。幼稚園からか、大学の4年間だけか。
  • 公立か私立か。同じ学校種でも、ここでいちばん大きく開きます。

つまり「教育費はいくらか」という問いには、範囲を決めないと答えが出ません。逆に言えば、範囲さえ決めれば答えは出ます。以下は、範囲ごとに何が公表されているかの整理です。

幼稚園から高校までは「学習費総額」で見る

文部科学省が、家庭が実際に支出した額を調べています。この調査の「学習費総額」は、学校に払うお金(学校教育費)、給食費、そして塾や習い事(学校外活動費)の合計です。

塾や習い事が入っていることが、この数字の性格を決めています。学校に払う分だけを見たい人には多すぎる数字ですし、家庭による差がいちばん大きく出るのもここです。同じ公立中学校に通っていても、通塾するかどうかで実際の支出はかなり違います。

令和5年度「子供の学習費調査」の学習費総額(学校教育費・学校給食費・学校外活動費の合計、高等学校は全日制)。令和6年12月25日公表分の令和8年1月16日訂正版。 平均額なので、この額がかかるという意味ではありません。
学校種公立(年間)私立(年間)
幼稚園(3年)184,646円347,338円
小学校(6年)366,599円1,741,516円
中学校(3年)542,450円1,560,359円
高等学校(3年)596,954円1,179,261円

大学は「入学の年だけかかるもの」を分ける

大学は、入学の年だけ入学料がかかります。総額を年数で割った数字を見ていると、この分がどこにも現れません。入学料を含む初年度と、毎年の授業料・施設設備費を分けて見るのが扱いやすい形です。

省令の標準額(授業料 年額535,800円・入学料282,000円)。各国立大学法人は標準額の120%を上限に自ら定められるため、実際の額は大学ごとに異なります。 「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果」の学部系統別の合計(授業料+入学料+施設設備費)。全員に必ずかかる納付金だけを積むため合計を使い、学部や課程によって有無が分かれる実験実習料などは含めていません。それらまで含めた「総計」が同じ表にあり、額は大きくなります(医歯系で約621万円)。 同じ調査の授業料と施設設備費を足した額です(文科系なら850,392円+141,892円)。入学料は初年度だけなので入れていません。この調査が調べているのは入学初年度だけで、同じ額が2年目以降もかかるかどうかは調べていません。
入学初年度毎年かかる分(年額)
国立大学/4年817,800円535,800円
私立大学(文系)/4年1,212,235円992,284円
私立大学(理系)/4年1,602,053円1,356,691円
私立大学(医歯系)/6年4,779,143円3,690,894円

よそで見る数字と合わないことがあります

上の表と、よそで目にする額が食い違うことがあります。含めているものが違うためで、どちらかが間違っているわけではありません。実験実習料などまで含めた、もう一段大きい数字が同じ調査の中に並んでいます。額を比べる前に、それぞれが何を含んでいるかを確かめてください。

右の列は、入学料を除いて毎年かかる分です。私立は同じ調査の授業料と施設設備費を足した額(どちらも公表されている数字)、国立は省令の授業料で、こちらに施設設備費はありません。2年目以降は、授業料と施設設備費が初年度と同じ額で続くものとして積んでいます。調査が調べているのは入学初年度だけなので、ここは本サイトが置いた前提です。施設設備費を毎年徴収するかどうかは大学によって違います。

自宅から通うかどうかで、もう一段変わる

進学先が家から通えない場所だと、住居費と食費が新しく発生します。日本学生支援機構の調査では、下宿している学生と自宅から通う学生とで、生活費に年間で次の差があります。

76万円(自宅から通う場合との差)。これは公表されている生活費の平均どうしを引いた、本サイトの算出値です。下宿する学生と自宅から通う学生では進学先の地域や家庭の状況も違うので、その差がまるごと「下宿によって増える額」だとまでは言えません。桁をつかむための目安として見てください。

額そのものより、この項目が入るかどうかで総額の見え方が変わることのほうが重要です。進路が決まっていない段階では、自宅から通う場合と通わない場合の両方を出しておくと、あとで慌てずに済みます。

総額より、いつ要るかで決まる

ここまで範囲の話をしてきましたが、実際に効いてくるのは総額ではありません。教育費は支出が均等に発生せず、大学入学の年に大きな山が来ます。

総額を年数で割った額を積み立てていると、その山の時点で残高が足りません。必要なのは「平均していくら貯めるか」ではなく「いちばん高い年に間に合うか」で、これは進路を1つ選べば計算できます。

毎年かかるぶん入学の年にまとまって出るぶん総額を年数で割って積んだ残高山の時点で残る差幼稚園から高校まで大学入学の年在学中高さは形を示すためのもので、金額は置いていない
教育費は、毎年かかるぶんと、入学の年にまとまって出るぶんに分かれます。総額を年数で割って積むと、伸びるのは、ならして積んだ線のほうです。間に合うかどうかは、いちばん高い年の位置で見ることになります。

結局いくら見ておけばよいのか

問 資料ごとに数え方が違うのは分かった。結局いくら見ておけばよいのか
答 1つの数字では出せません。公立か私立か、塾に通うか、家から通えるか。どれが変わっても額が動くためです。
問 知りたいのは自分の家の場合である。範囲を並べて終わりでは「分かりません」と同じで、毎月いくら積み立てるかも決められないのではないか
答 そのとおりで、上の説明は途中で止まっています。決められるのは額そのものではなく、順番のほうです。進路を1つ仮に置けば、いつ、いくらの山が来るかは決まります。そこから逆算する形になります。
問 山とは、大学に入る年のことか
答 入学の前後に費用が集中しやすいと言われます。総額を年数で割った額を積んでいると、その年に届きません。割り算ではなく、いちばん高い年に間に合うかで見る、という整理が扱いやすくなります。仮に置いた進路が変われば、置き直せば済みます。金額を当てにいくのではなく、間に合うかどうかを見る使い方です。

では、何ができるか

数字を当てにいく必要はありません。決められるところから決めていく、という見方があります。

  1. 進路を1つ仮に置いた場合の桁。当てるためではなく、山の位置と大きさを知るための仮置きです。
  2. 使える支援制度の確認。就学支援金、授業料の減免、給付型奨学金は、必要な自己資金の額そのものを変えます。全額を自力で用意する前提で計算すると、実態より大きな数字が出ます。
  3. 使う時期との距離。教育費は使う時期と金額がほぼ決まっているお金なので、老後資金とは扱いが変わります。時期が近づくほど値動きの幅を小さくしていく、という整理が一般に紹介されます。

進路のパターンを選んで山の位置と必要な積立額を出すところは、試算ツールで動かせます。前提を変えると結果がどう動くかも、そこで確かめられます。

出典

  1. [1]文部科学省「子供の学習費調査(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))
  2. [2]文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))入学初年度の授業料・入学料・施設設備費の平均額。令和5年度調査から隔年実施で、最新は令和7年度入学者(2025年12月26日公表)。2年目以降の納付金は調査対象外。
  3. [3]デジタル庁 e-Gov法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令 第2条(授業料・入学料の標準額)(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))国立大学の学部は授業料の年額535,800円・入学料282,000円が標準額。第10条により各国立大学法人は標準額の120%を上限に自ら定められるため、実際の額は大学ごとに異なる。
  4. [4]日本学生支援機構(JASSO)「学生生活調査(新しいタブで開きます)」(利用条件: 出所を明記すれば転載・複製が可能(新しいタブで開きます))隔年実施。居住形態(自宅・学寮・下宿等)別の学費と生活費の内訳が取れる。最新は令和6年度(2026年3月31日公表)。