6. かりるという 約束
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(かりるって、どういうこと?)のほうを配ってください。読み終えたあとの「ふりかえってみよう」も、そちらのページにあります。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 借入は「将来の自分から前借りする」仕組みです
- 借りるとは、将来の収入の一部を先に使うことです。だから、返せるかどうかは「いま返せるか」ではなく「返す時期に収入があるか」で決まります。住宅ローンや事業資金が社会的に受け入れられているのは、借りたお金で得られるもの(住まい・売上)が、返済の期間にわたって続くと見込めるためです。逆に、返済の原資の見通しがないまま借りると、借り換えを重ねる状態になります。この線引きが、善悪の判断より先に来ます。
- 利子は、貸す側が引き受けたものの対価です
- 貸し手は、返ってこない可能性(信用リスク)と、その間そのお金を別の使い方に回せないこと(機会費用)と、審査や回収の手間を引き受けています。利子はその対価だと説明されます。「金利が高い=ずるい」ではなく、引き受けているものが大きいほど高くなる、という関係で扱うと、単元8のリスクとリターンにそのままつながります。
- 遅れると、増え方が変わります
- 返済が遅れると、約定の利息に加えて遅延損害金がかかるのが一般的です。加えて、返さないでいると、増えた分にも利息がついていきます。単元7で扱う複利が、借りる側に働く形です。「時間は味方にも敵にもなる」という対の関係で示すと、複利の理解も深まります。
- 相談先があることを、先生が知っておいてください
- 返済に行きづまったときの相談先は実際にあります(消費生活センターの消費者ホットライン188、法テラス、自治体の相談窓口)。児童本人が使う場面は想定しませんが、家庭の状況を打ち明けられたときに「相談できる場所がある」と言えることには意味があります。金額や家庭の事情を教室で聞き取ろうとせず、個別に時間を取ってください。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. お金を貸してあげるのは、いいことじゃないの?
- 人を助けたい気持ちは大切です。ただ、友だちどうしのお金の貸し借りは、返す返さないで関係がこわれやすいので、学校ではしないことになっている、と伝えてください。「気持ちの問題」ではなく「約束が守れなかったときに困るのはお互い」という説明のほうが、児童には通じます。
- Q. うちは家のお金をかりているけど、それはよくないことなの?
- 「返す見通しを立てて借りるものと、そうでないものがある」と答えてください。住宅ローンは前者の代表です。家庭の状況を教室で説明させないでください。この質問が出た時点で、学級全体への説明は一般論にとどめ、必要なら授業後に個別に話す時間を取ります。
- Q. 返せなくなったら、どうなるの?
- 返す金額がふえていくこと、そして相談できる場所があることの2つを答えてください。おどす形にしないのが要点です。「返せなくなる人は珍しくないし、そのための相談先が用意されている」という事実が、早く話すという行動につながります。
- Q. 銀行はどうして、返せるかどうか分かるの?
- 収入や、これまでの返し方の記録を見て判断しています(審査)。ここで具体的な信用情報の話まで踏み込む必要はありません。「貸す前に、返せそうかを確かめている」という程度で十分です。
伝え方で気をつけること
- 「借金は悪」という価値づけをしないでください。家庭に借入がある児童に、家のことを恥ずかしいと感じさせます。返せる見通しがあるかどうかで見る、という整理にそろえます。
- この授業をきっかけに、児童どうしの金銭の貸し借りが起きないようにしてください。導入で扱う貸し借りは、ものにとどめます。
- 特定のカードやサービスを名指しして批判しないでください。仕組みの話として扱います。
- 「かりなければ安全」で終えないでください。返せなくなったときに相談する、という行動まで置いて終わります。
この時間のねらい
- かりることは「あとで返す」という約束だと説明できる。
- お金をかりると、返す金額のほうが多くなることが分かる。
- 返せなくなったときに、だまっていないで早く話す相手を言える。
学習指導要領との対応
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 物や金銭の大切さ、計画的な使い方
- 小学校 道徳(第5学年・第6学年): 約束や きまりを守る、正直・誠実
- 小学校 算数(第5学年): 割合、百分率
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「かりたことがあるものは何?」と問いかけ、図書室の本、体育の道具、友だちの消しゴムなどを挙げさせる。どれにも「いつまでに返す」という約束が付いていることを確認する。お金の話に入る前に、貸し借りが約束であることを共有しておく。 |
| 展開1 | 14 | 貸す側とかりる側の2役でロールプレイする。「いつまでに」「どうやって返すか」を口頭で決めさせたあと、あえて決めずに貸した場合に何が起きるかを出させる。貸す側から見た心配(返ってこないかもしれない)を言葉にさせるのが狙い。 |
| 展開2 | 15 | ワークシートに移る。架空の約束(1,000円かりて、1年後に1,100円返す)で、返す金額と、返すのがおくれたときの金額を計算する。単元5の「あずけるときと、かりるとき」の差を思い出させ、時間がたつほど返す金額がふえることを確かめる。 |
| まとめ | 8 | かりる前にたしかめる3つ(いくら返すか、いつまでに返すか、返せなかったらどうなるか)を確認する。返せなくなったときに早く話す、というところに着地させる。最後に、こども向けページの「ふりかえってみよう」3項目を配り、声に出して読み合わせる(できた/できないの採点にはしない)。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- ワークシートの印刷(クラス人数分)
- 電卓(グループに1台)
ワークシート:かりる前に、たしかめる
- つぎの約束を読みます。「1,000円かりて、1年後に1,100円返す」。返す金額は、かりた金額より いくら多いですか。
- 同じ約束で、返すのが1年おくれたとします。ふえた分にも同じだけつくとして、2年後に返す金額はいくらですか。
- かりる前に たしかめておくとよいことを、3つ書きます。
- 貸す人の立場になって、心配なことを1つ書きます。
- 返せなくなったとき、だれに話しますか。話す相手を書きます。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- 「かりるのは、いけないこと」と言えるでしょうか。言えないとしたら、それはどんなときでしょう。
- 友だちに「お金を貸して」と言われたら、どうしますか。貸すときと貸さないときで、何が変わるでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | かりることが「あとで返す約束」であり、返す金額のほうが多くなることを説明できる。 | ワークシート①②の計算と、展開1の発言。 |
| 思考・判断・表現 | 貸す側から見た心配と、かりる前にたしかめることを、自分の言葉で挙げられる。 | ワークシート③④。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | かりることを善悪で決めつけず、返せる見通しと相談する相手で考えようとしている。 | 話し合いの問い①②での発言と、ワークシート⑤。 |
指導上の配慮
- 家庭に借入がある児童がいる可能性に配慮してください。住宅ローンや事業の借入は、返す見通しを立てて使うものです。「借金がある家=よくない家」と読める言い方は避け、返せる見通しがあるかで見る、という整理にそろえてください。
- この授業をきっかけに、児童どうしの金銭の貸し借りが起きないようにしてください。学校では金銭の貸し借りをしない、という指導と矛盾しないよう、導入で扱う貸し借りは、ものの貸し借りにとどめます。
- 具体的なカードやサービスの名前は出さないでください。単元5と同じく、仕組みと関係だけを扱います。18歳成年や多重債務までは踏み込みません。
- 「返せなくなったら早く話す」で終えてください。こわがらせて終わると、いちばん相談してほしい児童が言い出せなくなります。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/borrowing-and-promises/