9. 税金と、みんなで支えるしくみ
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(みんなで出し合って、みんなで支える)のほうを配ってください。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 税と社会保険料はちがうもの
- 税は対価を特定せずに徴収されるもの、社会保険料は給付と結びついた保険の仕組みです。健康保険料を払っているから医療費が3割負担で済む、という対応関係があります。給与明細ではまとめて引かれるので混同されがちです。
- 所得税は累進課税
- 課税所得が多いほど税率が上がる仕組みです。ただし「年収が上がって税率区分が変わると手取りが減る」ということは起こりません。超えた部分にだけ高い税率がかかるためです。ここは誤解が非常に多い部分です。
- 公的年金は積立ではなく賦課方式
- 現役世代が納めた保険料が、そのときの高齢者の年金に充てられる仕組みです。「自分が払った分が自分に返ってくる貯金」ではありません。だから少子高齢化が制度に直接影響します。
- 額面と手取りの差はおよそ2割
- 所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料を合わせると、額面の2割前後が引かれるのが一般的です(収入や年齢で変わります)。初任給で驚くのはこのためです。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. 年収が上がって税率が変わると、損をするの?
- しません。ここは誤解が多いところです。たとえば課税所得330万円を超えた場合、超えた部分にだけ20%がかかり、330万円までは元の税率のままです。境界を1円超えても手取りが逆転することはありません。
- Q. 年金は将来もらえないんじゃないの?
- 「もらえなくなる」ことを示す公的な見通しはありません。2024年の財政検証では、経済前提の悪いケースを除き、100年程度の財政均衡が確保できる見通しとされています。ただし、現役世代の手取りに対する比率(所得代替率)は下がる見通しです。「ゼロになる」と「水準が下がる」は別の話だ、と整理してください。
- Q. 税金を払いたくない人はどうすればいいの?
- 税は法律で定められた義務です。一方で、控除の仕組みを使って合法的に負担を調整することはできます(医療費控除、ふるさと納税、iDeCoの所得控除など)。「払わない」ではなく「制度を知る」という方向に導いてください。
伝え方で気をつけること
- 「税金は取られるもの」という語り口にしないでください。対価との交換として扱うと、次の議論が深まります。
- 特定の政策や政党への評価に踏み込まないでください。制度の仕組みの説明にとどめます。
- 税率や保険料率は改定されます。具体的な数値を使う場合は、その年の資料でご確認ください。
この時間のねらい
- 税金が何に使われているかを説明できる。
- 1人では持てないものを、みんなで出し合って持っていることに気づく。
- 病気やけがのときに支え合うしくみがあることを説明できる。
学習指導要領との対応
- 小学校 社会科(第6学年): 我が国の政治の働き、税金の役割と国民生活
- 小学校 社会科(第3学年・第4学年): 地域の安全を守る仕事、水やごみを処理する仕事
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 買物のしくみ、消費者としての自分の役割
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「学校のプールは、だれのお金で作られたと思う?」と問いかける。 |
| 展開1 | 14 | 町の中や学校の中から「税金で作られているもの」を探して書き出し、グループで発表する。 |
| 展開2 | 15 | 「もし税金がなかったら」を考える。手もとのお金は増えるが、病院代は全額自己負担、道路も学校も自分たちで用意することになる。どちらがよいかではなく、何と引きかえているかを考えさせる。 |
| まとめ | 8 | みんなで支える部分と、自分で用意する部分があることを確認して、次の単元につなげる。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- 架空のレシート(教員が作成。本体価格・消費税・合計が並ぶもの。実在の店名は使わない)
- ワークシートの印刷(クラス人数分)
- 電卓(1人1台、またはグループに1台)
ワークシート:税金でできているものを さがす
- 町の中や学校の中から、税金で作られていると思うものを5つ書きます。
- その中から1つ えらび、もし無かったら どうなるかを書きます。
- 配られたレシートから、消費税の金額を見つけて書きます。
- 「取られている」ではなく「何かと引きかえている」と考えると、何と引きかえていますか。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- 税金が高い国と、安い国では、くらしは どうちがうでしょう。
- みんなで支えるところと、自分で用意するところは、どこで分ければよいでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 税金の使い道と、病気やけがのときに支え合うしくみを説明できる。 | ワークシート①②の記述。 |
| 思考・判断・表現 | レシートから消費税を読み取り、身の回りのものと税金を結びつけて示せる。 | ワークシート③の記入と展開1の発表。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 引かれる額を損と決めつけず、何と引きかえているかを考えようとしている。 | ワークシート④と話し合いの問い②。 |
指導上の配慮
- 税率は改定されます。授業で具体的な数値を使う場合は、その年の資料を確認してください。
- 「税金は取られるもの」という語り口ではなく、何と引きかえているかという形で扱うと、次の単元とつながります。
- 家庭の収入に踏み込まないでください。給与明細を教材にするのは、この段階では避けています。レシートも教員が用意した架空のものを使い、家から持ってこさせないでください。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/taxes-and-insurance/