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タネとチエ

育児期間の国民年金保険料の免除が始まります

2026年10月1日から、育児期間の国民年金保険料免除制度が始まります。子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号。2024年6月12日公布)が新設したもので、根拠になる条文は国民年金法第88条の3です。名前を見ると育児中の人すべてに関係する話に読めますが、対象になるのは国民年金の第1号被保険者です。ここを取り違えると、記事の残り全部が別の制度の説明になってしまいます。まず、誰の話なのかから始めます。

コラム

公開

誰の話なのか

国民年金の被保険者は、保険料の納め方によって区分が分かれています。第1号被保険者は、自営業・農業・学生・無職の人など、厚生年金保険に入らず自分で国民年金保険料を納めている人です。2026年10月から始まる免除は、この第1号被保険者についての制度です。

  • 対象になるのは、1歳未満の子と同一住所である国民年金第1号被保険者の実父母・養父母(父母のいずれも対象)。父母のどちらか一方ではなく、それぞれが自分の保険料について対象になります。
  • 対象にならないのは、国民年金第2号被保険者(会社員・公務員など厚生年金保険の加入者)、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者)、任意加入被保険者。
  • 子の範囲は実子・養子だけではありません。実子・養子のほか、特別養子縁組の監護期間にある子、養子縁組里親に委託されている子、および養子縁組里親としての委託が適当と認められながら実親等の反対により養育里親として委託されている子も含まれます。

会社員や公務員には、別の扱いがあります。第2号被保険者については、育児休業等をしている間の社会保険料が免除される別の制度があるとされています。ただしそれは厚生年金保険・健康保険の側の制度で、根拠になる法律も手続きも別です。今回新しくできたものではありません。自分がどちらの話を読んでいるのかは、加入している制度で決まります。

「育休中の年金保険料が免除される制度ができた」とは読めません

この制度が新しく作ったのは、国民年金の第1号被保険者についての免除です。育児休業という言葉のほうが広く知られているため、報道や見出しで「育児期間の保険料免除」とだけ見ると、勤め先の育児休業を取る人の話だと読めてしまいます。国民年金第2号被保険者(会社員・公務員など厚生年金保険の加入者)、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者)、任意加入被保険者は、この制度の対象ではありません。

どの期間が免除されるのか

免除される期間の数え方は、2とおりあります。すでにある産前産後期間の免除を受けた実母と、それ以外の場合とで、どこから数えるかが違うためです。

厚生労働省「育児期間の国民年金保険料免除制度」、日本年金機構「国民年金保険料の育児免除制度」と、国民年金法第88条の3によります。産前産後期間の免除は出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間で、2019年4月から続いている別の制度です。
どの立場かいつからいつまで月数
産前産後免除を受けた実母産前産後免除期間に引き続く9か月間9か月
実父・養父母(産前産後免除の期間がない実母を含む)子を養育することとなった日の属する月から、子が1歳になる誕生日の前月まで最大 12か月

9か月と12か月という2つの数字が並ぶので、母のほうが短いように見えます。そうではなく、実母の場合は手前に産前産後期間の免除(4か月、多胎の場合は6か月)があり、続けて数えると同じく子が1歳になるまでを覆います。表の月数だけを取り出して長短を比べると、逆の意味になります。

要件についても、ないものが2つあります。保険料の免除というと収入が少ない人のための仕組みという印象がありますが、この制度の要件はそうなっていません。

  • 所得要件はありません。収入の多い少ないで対象が分かれません。
  • 休業要件はありません。仕事を休んでいなくても対象になります。
  • 満たす必要があるのは、子と身分(親子)関係が継続していること、子と同一住所であることの2つです。
  • 期間の途中でも、子が死亡したとき、子と同居しないこととなったときなど、子を養育しないこととなったときは、そこで終わります。

「同一住所」と「同居」、言い方が2つあります

日本年金機構は要件として「子と同一住所であること」と書き、国民年金法施行規則のほうは、免除が終わる事由を「子と同居しないこととなつたとき」と書いています。指しているものは同じと読めますが、資料によって言葉が違うので、片方だけを覚えていると別の要件があるように見えることがあります。単身赴任や里帰りのように、住んでいる場所と住民登録がずれる形をどう扱うかまでは、公表されている資料からは読み取れません。

免除された期間は、年金にどう扱われるか

この制度で免除された期間は、保険料を納付したものとして保険料納付済期間に算入されるとされています。つまり、老齢基礎年金の受給額に反映されるという扱いです。納めなかった期間なのに、納めた期間として数えるという点が、この制度の中心にあたります。

注意がいるのは、「免除」という同じ言葉が、国民年金の中でいくつもの別の仕組みに使われていることです。所得が少ない場合の申請による免除、納付の猶予、学生についての特例と、名前はどれも似ています。ところが、年金額への効き方は仕組みごとに違います。ここで説明しているのは育児期間の免除の話で、ほかの免除や猶予も同じ扱いになる、とは読めません。自分が受けているものがどれなのかは、承認や決定の通知に書かれている制度の名前で見分けることになります。

  • すでに保険料を納めている場合や、ほかの免除・猶予が承認されている場合についても扱いが決められています。すでに保険料を納付している期間、法定免除・申請免除・納付猶予・学生納付特例が承認されている期間も、届出により育児免除期間として取り扱われる(納付済みの保険料は充当または還付)。
  • 付加年金のための上乗せについては、育児免除期間中も付加保険料を納付できるとされています。付加保険料は月額400円で、これは今回決まった額ではなく、もとからある額です。

このページでは免除額や年金額の試算をしません

保険料の月額は年度ごとに決まっているので、月数を掛ければ免除される額を出すことはできます。ただ、本サイトではその計算を載せません。免除される月数は生まれた月や立場によって人ごとに違ううえ、金額だけを取り出すと、誰が対象でどの期間が対象か、という制度の中身より先に数字が立ってしまいます。ここでは、対象・期間・年金での扱い、までを扱います。

この免除の費用は、どこから出るのか

保険料を納めなくてよいことにすると、そのぶんの財源が要ります。この制度については、子ども・子育て支援納付金(子ども・子育て支援金)で補填すると定められています。また、令和8年度から令和10年度までは、子ども・子育て支援特例公債の発行収入金も充てられるという特例も置かれています。

子ども・子育て支援金は、医療保険の保険料に上乗せする形で集められているもので、こちらの拠出については別に書いています(子ども・子育て支援金の拠出が始まりました)。負担の側と給付の側を差し引いて、得か損かを出すことはしません。どちらも出る人・受ける人の範囲が違い、1つの家計の中でも年によって立場が変わるので、差し引きした数字は誰の話でもなくなります。ここで書けるのは、この免除の費用がどこから出ると法律に書かれているか、までです。

いつから始まり、どこに届け出るのか

施行は2026年10月1日です。ここで日付がもう1つ出てきます。改正法の附則は、この免除を「令和8年10月以後の各月の保険料」について適用する、と定めています。線を引いているのは子の生まれた日ではなく、保険料の月のほうです。

そのため、施行の日にすでに1歳未満の子を養育している場合も対象から外れません。この場合は、2026年10月分以降で、子が1歳になる誕生日の前月までに残っている月が免除されるという形になります。「2026年10月以降に生まれた子から」ではありません。

  • 届出先は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口(郵送も可)です。
  • 令和8年10月1日以降、マイナポータルから電子申請できるとされています。
  • 届出の時期は、育児免除の要件を満たした日以降、速やかに届け出るという案内です。施行日より前に受け付ける経路は置かれていません。
  • 届出が要らない場合もあります。産前産後免除期間が令和8年9月以降に終了した実母のうち、基礎年金番号とマイナンバーの紐付けにより親子関係と子との同一世帯が確認できる人は、届出が不要(該当通知書が送られる)。

名前が似ている制度と、どう見分けるか

会社に勤めているが、この制度はまったく関係ないのか
第2号被保険者である間は、この制度の対象ではありません。ただ、区分は働き方が変わると動きます。勤めをやめて自営業になった、扶養から外れた、といった時期に第1号被保険者になっていれば、その期間は対象になりえます。
仕事を休まずに働き続けている自営業者でも対象になるのか
休業要件は置かれていません。所得要件もありません。育児休業という制度のない働き方を前提に作られたため、休んでいるかどうかを要件にしていない、と制度設計の資料は説明しています。
対象かどうかは分かったが、施行より前に生まれた子はどうなるのか。ここまでの説明では読み取れない
言われてみると、上の書き方では足りていません。適用の線は保険料の月で引かれているので、施行の日に子が1歳未満であれば、その月から先の残っている月が対象になります。子が生まれた日で対象かどうかが決まるわけではない、というのがここの読み方です。
では、自分の場合を確かめるには何を見ればよいのか
出発点は、自分が国民年金の第何号被保険者かという点です。これは年金の通知や納付書で分かります。そのうえで、期間の数え方や届出の要否は市区町村の国民年金の窓口と日本年金機構の案内で確かめられます。

この免除には、期限までに動かないと権利が消える、という性質の締め切りは示されていません。届出ができるようになるのも2026年10月1日からで、それより前に手続きを済ませておく道はありません。いま確かめられるのは、自分がどの区分の被保険者かという点と、子の年齢から見て対象になりうる月が残っているかという点の2つです。そこまで分かっていれば、窓口で何を聞けばよいかも決まります。

出典

  1. [1]日本年金機構国民年金保険料の育児免除制度(新しいタブで開きます)(利用条件: 原則としてリンクフリー・転載フリー(転載の制限が注記されているページを除く)(新しいタブで開きます)手続きの実務(届出先・添付書類・届出が不要な場合・施行前から子を養育している場合の扱い)まで書いてあるのはこのページだけ。ページの更新日は2026年9月8日。同じ内容の特設ページ(/tokusetsu/ikujimenjo.html)もあるが、手続きの詳細はこちらに集約されているので登録していない。
  2. [2]厚生労働省育児期間の国民年金保険料免除制度(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)制度の骨格(施行日・対象・免除期間・財源)を1ページにまとめたもの。第2号被保険者の育児休業等期間の社会保険料免除が別制度であることも、ここに注記がある。ページ自体は更新日を持たない。
  3. [3]厚生労働省年金局第13回社会保障審議会年金部会 資料3「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案における国民年金法の改正について(報告)」(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)2024年3月13日の部会資料。所得要件・休業要件を設けない理由と、基礎年金額を満額保障する方針が、制度設計の言葉で書かれている唯一の資料。当時は「2026年10月1日施行予定」と書かれており、確定した施行日は法令で確認すること。
  4. [4]デジタル庁 e-Gov法令検索国民年金法 第5条(用語の定義)・第87条の2(付加保険料)・第88条の2(産前産後期間の保険料免除)・第88条の3(育児期間の保険料免除)(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)育児期間の免除(第88条の3)は2026年10月1日施行版に入っている。今日(現行)の版には無いので、e-Gov の時点指定で切り替えて読む。改正法は子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号、2024年6月12日公布)で、その附則第1条第6号ロが第9条(国民年金法の改正)の施行日を令和8年10月1日と定め、附則第10条が「令和八年十月以後の各月の保険料について適用する」という適用関係を定めている。
  5. [5]デジタル庁 e-Gov法令検索国民年金法施行規則 第73条の8〜第73条の11(育児期間の保険料免除に関する届出等)(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)届出先が市町村長であること、免除が終わる事由が「子と同居しないこととなつたとき」であること、産前産後免除の届出で確認できる場合に育児免除の届出を要しないこと(第73条の9第1項ただし書)の根拠。2026年10月1日施行版で読む。産前産後免除にある「出産予定日の6月前から届出できる」という前倒しの規定(第73条の7第3項)は、育児免除には置かれていない。
  6. [6]日本年金機構国民年金保険料の産前産後期間の免除制度(新しいタブで開きます)(利用条件: 原則としてリンクフリー・転載フリー(転載の制限が注記されているページを除く)(新しいタブで開きます)2019年4月に始まった既存の制度。育児免除の「産前産後免除期間に引き続く9か月」を読むには、その手前の4か月(多胎は6か月)がどこから数えるかを知る必要がある。ページの更新日は2024年11月1日。