為替(ドル円)
円安・円高というニュースが、なぜ生活に関係するのか。そもそも為替は何で動くのか。仕組みから整理します。
2026年7月の月中平均
162.45円
2020年の年平均
106.78円
2020年 → 2024年の変化
+41.9%
ドルに対する円の価値は約29.5%下落
基準日 2026年7月31日 / 取得日 2026年8月30日
ドル円レートの推移(年平均)
単位: 円/ドル
日本銀行の月中平均を単純平均して本サイトが算出した参考値です。日銀が「年平均」として公表している値そのものではありません。
データを表で見る
| 年 | 年平均(円/ドル) |
|---|---|
| 2015年 | 121.02 |
| 2016年 | 108.84 |
| 2017年 | 112.16 |
| 2018年 | 110.40 |
| 2019年 | 109.01 |
| 2020年 | 106.78 |
| 2021年 | 109.78 |
| 2022年 | 131.37 |
| 2023年 | 140.51 |
| 2024年 | 151.50 |
| 2025年 | 149.65 |
そもそも為替とは何か
通貨と通貨を交換する比率のことです。「1ドル = 150円」なら、1ドルを手に入れるのに150円要る、という意味です。
数字が大きくなる(150円 → 160円)と円安です。同じ1ドルを買うのに、より多くの円が必要になったということなので、円の価値が下がっています。数字が大きくなるのに「安」なので、直感と逆になりがちです。
なぜ動くのか
為替を動かす要因はいくつもありますが、中でも大きいのが2国間の金利差です。
考え方は単純です。円で預けても金利がほとんどつかず、ドルで預ければ高い金利がつくとすれば、円を売ってドルを買う動きが出ます。ドルの需要が増えるので、ドルが高くなる(=円安になる)というわけです。
日本銀行の分析
2021年1月から2023年9月半ばにかけて約32%の円安が進みました。日本銀行のワーキングペーパーによる分析では、このうち約24%ポイントが米国の金利の影響によるものとされています。
つまり、この期間の円安の大部分は「日本の事情」ではなく「米国の金利が上がったこと」で説明できる、という分析です。ニュースでは日本側の要因が強調されがちですが、実際には相手側の動きが効いています。
ほかの要因
- 物価の差(購買力平価)。長期的には、物価が高くなる国の通貨は弱くなる方向に働くとされます。ただし、この力が現れるには非常に長い時間がかかります。
- 貿易収支・経常収支。輸出で稼いだ外貨を円に替える動きは円高要因、輸入の支払いで円を外貨に替える動きは円安要因です。近年はデジタルサービスへの支払いも無視できない規模になっています。
- 資本の移動。日本の投資家が海外の資産を買えば、円を売ることになります。NISA の普及で個人が外貨建て資産を買う動きも、規模としては小さいながら同じ方向に働きます。
- リスク回避。世界的に不安が高まると、円が買われる局面があります(円は「安全通貨」と呼ばれることがあります)。ただし、この性質は時期によって変わります。
日米の金融的な関係
日本銀行と米国の FRB(連邦準備制度理事会)は、それぞれ自国の物価と雇用のために金融政策を決めます。相手国の為替のために決めるわけではありません。
ところが、両者の政策金利の差が開くと、その差が資金の流れを生み、為替が動きます。つまり為替は「政策の結果として動くもの」であって、直接の目標ではない、という関係です。
日本の当局が為替介入を行うことはありますが、これは水準そのものを変えるためではなく、急激な変動をならすためとされています。金利差という根本の要因は、介入では変えられません。
世界各国との関係
ドル円だけを見ていると、話の半分を見落とします。円は、ユーロにも、人民元にも、新興国通貨に対しても動いています。
そこで使われるのが実効為替レートです。貿易量で重みをつけて、複数の通貨に対する円の強さを1つの指数にしたものです。「ドルに対しては円安だが、通貨全体で見るとどうか」を確認できます。
また、ドル自体が世界の基軸通貨であるため、米国の金利が動くと、日本だけでなく世界中の通貨と資金の流れが影響を受けます。新興国では、ドル建ての借入がある国ほど強い影響を受けます。
生活と物価への影響
日本はエネルギーと食料の多くを輸入しています。円安になると、同じものを買うのに必要な円が増えるので、輸入価格が上がり、時間差をおいて店頭の価格に反映されます。
近年の物価上昇には、この経路(コストプッシュ)の要素が大きいと説明されることが多くあります。景気が良くて需要が強いから上がっているのとは、性格が違います。
物価のデータとあわせて見ると、2022年以降に物価が上がり始めた時期と、円安が進んだ時期が重なっていることが分かります。
ただし、単純な因果ではありません
円安だけが物価上昇の原因ではありません。資源価格そのものの上昇、供給網の混乱、人件費など、複数の要因が同時に働いています。時期が重なっていることは、片方がもう片方を引き起こした証拠にはなりません。
資産形成との関係
- 外貨建て資産を持つと、為替の変動が乗ります。全世界株式や米国株式のインデックスファンドは、為替ヘッジなしが一般的です。現地通貨で横ばいでも、円高なら円建てでは下がります。
- それは分散でもあります。円の価値が下がる局面では、外貨建て資産の円換算額は上がります。円だけで資産を持つことは、円という1つの通貨に集中していることでもあります。
- 債券では為替の影響が相対的に大きくなります。期待リターンが小さいぶん、為替の変動が結果を左右しやすくなります。為替ヘッジありを選ぶ考え方があるのはこのためです。
- 為替の方向は予測できません。プロでも当たりません。「円安が続くから」という理由で配分を決めるのは、予測に賭けることになります。
今後の日本はどうなるのか
このサイトでは、将来の為替や物価を予測しません。予測できないからです。代わりに、確度の違う3種類の情報を分けて示します。
- 比較的確からしいこと。すでに生まれている人の数は変わらないため、今後数十年の人口構成はかなりの確度で見込めます。高齢化が進み、生産年齢人口が減ることは、ほぼ確実です。
- 仮定に基づく見通し。公的年金の財政検証は、複数の経済前提ごとに給付水準の見通しを示しています。これは予測ではなく「この前提ならこうなる」という条件付きの計算です。
- 分からないこと。10年後の為替、物価、株価。これらは分かりません。分かると主張する人がいたら、その主張のほうを疑ってください。
だから、このサイトが勧めるのは「予測を当てにいく」ことではなく、どの前提でも大きく外さない設計にすることです。分散、長期、そして自分で決めた配分を保つこと。予測が外れても致命傷にならない形にしておく、という考え方です。
出典
- [1]日本銀行「外国為替市況(東京市場 ドル・円 スポット中心相場)」
- [2]日本銀行「日本の為替レートの動向と決定要因に関する分析(ワーキングペーパー No.25-J-2)」2021年から2023年の円安のうち、どれだけが米国の金利で説明できるかを分析している。
- [3]総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(政府標準利用規約(第2.0版))