13. 見えない お金の はらい方
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(ピッとはらったお金は、どこへ行くの?)のほうを配ってください。読み終えたあとの「ふりかえってみよう」も、そちらのページにあります。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 「ピッ」の裏で動いているのは、口座と口座の記録です
- キャッシュレス決済では、現金が移動する代わりに、支払う側の口座(または前払い残高)と、加盟店側の入金記録が書きかえられます。児童には「だれのぶんがへって、だれのぶんがふえたか、を書きかえている」と言えば通じます。単元5の銀行の話(預かったお金を記録で管理している)と地続きです。
- 前払い・即時払い・後払いの3つに分けると整理できます
- 一般に、あらかじめ入金しておく前払い式、決済と同時に口座から引き落とされる即時払い式、後日まとめて引き落とされる後払い式に分けられます。児童に用語(プリペイド・デビット・クレジット)を覚えさせる必要はありません。「先に」「その場で」「あとで」の3つで足ります。見た目の操作が同じなのに、手元からへる時期だけが違う、という点が押さえどころです。
- 後払いは、立て替えてもらっている状態です
- 後払い式では、決済会社が加盟店への支払いを先に行い、利用者は後日その会社に支払います。つまり、短い期間の借入と同じ構造です。支払いが遅れれば遅延損害金がかかり、分割やリボルビング払いには手数料がかかります。単元6「かりるという 約束」で扱った関係が、そのまま当てはまります。なお、後払い式の契約そのものは未成年が単独で結べるものではないので、児童が今すぐ当事者になる話としては扱わないでください。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. カードの中に お金が入っているの?
- 前払い式のカードは、カードそのものではなく、会社の記録に残高が書いてあります。後払い式のカードには残高がなく、使った記録だけが残ります。どちらも「カードが財布になっている」わけではない、と説明できます。
- Q. お金がなくても買えるの?
- 後払い式では、あいだの会社が先に払ってくれるので、その場では買えます。ただし、あとで自分が払います。「買えた」ことと「払い終わった」ことは別だ、という言い方が分かりやすいです。単元6につながります。
- Q. どうして お店の人は、すぐ ものを わたしてくれるの?
- 決済の会社がお店への支払いを引き受けているからです。お店から見ると、お客さん本人ではなく会社から入金されます。その仕組みがあるので、お店はその場で商品を渡せます。
- Q. 記録だけなら、それは 本物の お金じゃないの?
- 本文で「動いているのは記録」と言うので、必ず出る質問です。現金も、みんなが受け取ると信じているから使えている、という単元1・2の話に戻せます。紙でも記録でも、受け取ってもらえるかどうかで成り立っている点は同じで、ちがうのは形と、信じる相手(国か会社か)です。
- Q. 現金は なくなるの?
- 分かりません、と答えてよい質問です。いまはどちらも使われていて、使えない場面もそれぞれにあります。「どちらが進んでいる」という話にせず、向き・不向きがある、というところで止めてください。
伝え方で気をつけること
- 「キャッシュレスは危ない」「現金は時代おくれ」のどちらの価値づけもしないでください。どのはらい方を使うかは家庭の事情もあり、授業で優劣をつける話ではありません。
- 家庭で使っている支払い方法を聞き取らないでください。カードの有無や枚数は、家庭の経済状況がそのまま出ます。
- 後払いを「借金」と言い切って怖がらせないでください。同時に「借りていない」とも言えません。あとで払う約束をしている状態、という言い方にそろえてください。
- 実物のカードやスマートフォンを教室で扱わせないでください。番号や個人の情報を扱うことになります。
- 手数料や利率の数値を板書しないでください。契約によって違ううえ、時期でも変わります。仕組みの説明で足ります。
この時間のねらい
- カードやスマホではらっても、動いているのは お金そのものではなく 記録だと説明できる。
- はらう タイミングが「先に」「その場で」「あとで」の3つに分かれることが分かる。
- あとではらうやり方は かりるのと 同じ約束だと気づき、使った分を たしかめる方法を 言える。
学習指導要領との対応
- 小学校 家庭科(第5学年・第6学年): 買物のしくみ、物や金銭の計画的な使い方
- 小学校 道徳(第5学年・第6学年): 節度、節制
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 8 | 「お店で はらうやり方を、いくつ知っている?」と問いかけ、現金、カード、スマホなどを挙げさせる。そのうえで「カードのときは、お札が動いていないのに、どうして買えるのか」を問う。答えは出させず、疑問のまま展開に入る。挙がった具体名(サービス名・アプリ名)は板書せず、その場で「先に」「その場で」「あとで」の3つに置きかえて板書する。「家では何を使っているか」には広げない。 |
| 展開1 | 8 | 教員と児童3名で、お店役・お客役・記録係の実演を全体の前で1回行う。名刺大の紙に「カード」と書いた模擬カードを使い、お客役が「ピッ」と言ったら、記録係が黒板の記録表の残高を書きかえる。お金の代わりに記録が動いていることを、全体で見て確かめる。班ごとに繰り返す時間は取らず、そのぶんを展開2に回す。実物のカードやスマホは使わない。 |
| 展開2 | 21 | ワークシートに移る。架空の人物の買い物を題材に、先にはらう・その場ではらう・あとではらうの3つで、いつ手元からへるのかを表に書き込ませる。あとではらうやり方だけ、お店にお金が入る時期と、自分の手元からへる時期がずれることを確かめる。単元6「かりるという 約束」に戻り、同じ形だと気づかせる。 |
| まとめ | 8 | 見えないお金でも記録に残っていること、あとではらうやり方は約束であること、おかしいと思ったら早く話すこと、の3つを確認する。どのはらい方がよいかは決めない。最後に、こども向けページの「ふりかえってみよう」3項目を配り、声に出して読み合わせる(できた/できないの採点にはしない)。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- ワークシートの印刷(クラス人数分)。残高を書きかえる記録表は裏面に入れて、1枚に収めてください
- 模擬カード1枚(名刺大の紙に「カード」と書くだけで足ります。作る時間は5分ほど)。実物のカードやスマートフォンは使いません
- 黒板に書く記録表(お客・お店の2行と、書きかえる欄)
ワークシート:いつ、へるのかな
- けんたさんは、先に 1,000円を 入れておく カードを 持っています。500円の 本を 買いました。カードに のこっているのは いくらですか。
- おなじ 500円の 本を、その場で 銀行の お金が へる やり方で 買いました。あずけてある お金が へるのは いつですか。(買った その日/つぎの月)から えらんで ○を つけます。
- おなじ 500円の 本を、あとで はらう やり方で 買いました。お店に お金が 入るのは いつですか。けんたさんの お金が へるのは いつですか。どちらも(買った その日/つぎの月)から えらびます。
- 3つの やり方を、自分の 手元から へるのが 早い順に ならべます。
- けんたさんが、使った ことを あとから たしかめるには、どこを 見れば よいですか。1つ 書きます。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- お金が 見えないほうが 便利でしょうか。それとも、こまることが あるでしょうか。
- あとで はらう やり方は、どんなときに 助かって、どんなときに こまるでしょう。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | カードやスマホでの支払いでは、現金ではなく記録が書きかえられていることを説明できる。 | 展開1の記録係の作業と、ワークシート①②。 |
| 思考・判断・表現 | 先にはらう・その場ではらう・あとではらうの3つを、手元からへる時期のちがいで整理できる。 | ワークシート③④。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | どのはらい方がよいかを決めつけず、使った分を記録でたしかめようとする姿勢が見られる。 | 話し合いの問い①②での発言と、ワークシート⑤。 |
指導上の配慮
- 家庭によって使っている支払い方法がちがいます。「家では何を使っているか」を発表させないでください。カードの有無や枚数は、家庭の経済状況が表に出る質問になります。
- 具体的なカード会社名・アプリ名・サービス名は出さないでください。単元5・単元6と同じく、仕組みと関係だけを扱います。
- 実物のカードやスマートフォンを持ち込ませないでください。紛失や、他人の情報を扱うことになります。厚紙の模擬カードで足ります。
- 「現金のほうが安全」「キャッシュレスのほうが進んでいる」のどちらの価値づけもしないでください。向き・不向きがあるところまでで止めます。
- 使いすぎをしかる形にしないでください。見えないと忘れやすいのは大人も同じで、だから記録を見る、という着地にします。
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