14. はたらくと お金が もらえるのは なぜか
45分で1コマ。指導案・ワークシート・話し合いの問い・指導上の配慮をまとめています。
小学校 中学年小学校 高学年45分
児童に配るページは別にあります。このページには発問の答えや指導上の配慮が含まれるので、児童にはこども向けの本文(はたらくって、どういうこと?)のほうを配ってください。読み終えたあとの「ふりかえってみよう」も、そちらのページにあります。
金融を専門に学んでこられていない場合は、先に先生のための予習をご覧ください。
授業の前に押さえておくこと
- 賃金は「役に立った量」の目盛りではありません
- 働いて受け取るお金は、一般に、その仕事にどれだけの人手が集まるか(供給)と、どれだけ必要とされているか(需要)の釣り合いで決まると説明されます。必要な資格や経験、危険の度合い、拘束される時間なども、そこに効いてきます。「役に立った量に比例して決まる」わけではありません。だから、社会に欠かせない仕事と、受け取る額が大きい仕事は、同じ順に並ぶとはかぎりません。どの仕事がそうかを例に挙げると、それ自体が特定の職業の賃金水準についての主張になるので、授業でも構造の説明までにとどめてください。児童には「一つのわけでは決まらない」というところまでで足ります。
- 働き方は雇われる形だけではありません
- 会社に雇われて給与を受け取る形のほかに、自分で店や事業を営む形、仕事ごとに契約して報酬を受け取る形があります。児童の家庭も同じではありません。授業では「会社に行ってお給料をもらう」という一つの型を標準に置かないでください。本文でも「はたらき方は人によってちがいます」と書き分けています。
- 対価の支払われない労働があります
- 家事、育児、介護、地域の活動のように、生活を支えていても金銭のやりとりが起きない働きがあります。金額として集計されないため、統計の上でも見えにくくなります。この単元で「お金がわたらないはたらき」を必ず扱うのは、金銭に換算できるものだけに価値があるという読み方を、最初のところで避けておくためです。
- 働いていない事情は、教室の中にもあります
- 病気やけが、介護、求職中、育児など、働いていない理由はいくつもあります。「はたらかざる者食うべからず」に近い語りは、そうした家庭の児童を直接傷つけます。単元10(税金と保険)で扱う「みんなで支える」という考え方と正面からぶつかる話でもあるので、その方向には進めないでください。
児童から出やすい質問と、答え方
- Q. お父さん・お母さんは、どんな仕事をしているの?
- 児童どうしで聞き合う流れになりやすい質問です。「今日は、家の人の仕事ではなく、学校の一日を支えてくれた仕事を見ていくよ」と、対象を学校の中に戻してください。答えたがる児童を止める必要はありませんが、順に発表させる形にはしないでください。
- Q. バスや 水道の 人の お金は、だれが はらったの?
- 本文で扱うお金の通り道はパン屋さんの1本だけなので、必ず出る質問です。バスは運賃を払った人から、水道は水道料金を払った家から、というように、通り道は仕事によってちがいます。学校の先生や、ごみを集める人のように、みんなが少しずつ出した税金から給料が支払われる仕事もあります。「買った人がお店に払う」形だけではない、というところまでで十分です。ここから単元10(税金と保険)の「みんなで出し合って支える」につながります。
- Q. どうして、たくさんお金がもらえる仕事とそうでない仕事があるの?
- いくつもの理由が重なっている、と答えてよい質問です。できる人が少ない、長い時間はたらく、危ないことがある、たのみたい人が多い、といった要素を挙げ、「だから、もらえるお金が大きいほうがりっぱ、ということではない」と添えてください。特定の職業の額を挙げないでください。
- Q. お手伝いをしたら、おこづかいをもらえるんじゃないの?
- 家庭によってちがう、というのが答えです。もらう家庭も、もらわない家庭もあります。どちらが正しいという話にせず、「家の中の決めごとはそれぞれちがう」で止めてください。おこづかいの有無や額を聞き取らないでください。
- Q. ロボットが仕事をするようになったら、人ははたらかなくていいの?
- 分かりません、と答えてよい質問です。なくなる仕事も、新しく生まれる仕事もあると言われています。「だれかのこまることをへらす」という中身のほうは残る、というところまでで十分です。
- Q. はたらいていない人は、どうしてるの?
- 病気やけが、家族の世話、仕事を探している最中など、事情はいくつもあると答えてください。そういうときのために、みんなで出し合って支える仕組みがある、と単元10につなげると、責める方向に流れません。
伝え方で気をつけること
- 家の人の仕事を書かせない・発表させないでください。職業は家庭の経済状況と結び付いて読まれます。
- お手伝いとおこづかいを結び付けて説明しないでください。「お手伝いはお金と交換するもの」という形にすると、そうしていない家庭の児童が置き去りになります。
- 仕事に上下や優劣をつけないでください。受け取る額の大きさを、努力や人格の指標として語らないでください。
- 賃金・時給の金額を出さないでください。地域や時期で変わるうえ、家庭の収入の話に引き寄せられます。この単元は金額なしで成り立ちます。
- 「将来つきたい仕事」を書かせて発表させる活動に広げないでください。進路や家庭の事情が表に出ます。
- 「はたらかない人はいけない」という語り方をしないでください。働いていない事情のある家庭の児童が教室にいます。
この時間のねらい
- はたらくとは、だれかの役に立つことをして、そのぶんのお金を受け取ることだと説明できる。
- 自分がはらったお金が、はたらいた人の手にわたっていくことに気づく。
- お金がわたるはたらきと、わたらないはたらきの両方があることが分かる。
学習指導要領との対応
- 小学校 社会科(第3学年・第4学年): はたらく人とくらし、地域のくらしを支える仕事
- 小学校 特別活動: 係活動・当番活動、はたらくことへの見方を育てる活動
- 小学校 道徳(第3学年・第4学年): 勤労、公共の精神
授業の流れ(45分)
| 段階 | 分 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 5 | 「今日、学校に来てから今までに、自分のためにはたらいてくれた人はいるだろうか」と問いかけ、2〜3人に挙げさせる。板書は3つまでにして深追いしない(全員がワークシート①で書くので、ここで出しきる必要はない)。出たものは「仕事の名前」で書く(「パンを作る人」)。人の名前や、特定の家庭の職業は板書しない。児童に家の人の仕事を言わせない。 |
| 展開1 | 13 | 本文の2番目・3番目の節を扱う。「はたらく=だれかのこまることをへらす、あったらいいなを用意する」を板書で確かめたあと、パンを例に、買った人 → お店 → 作った人、と矢印1本でお金の通り道を書く。「パン屋さんに買う人がいなければ、パン屋さんがわたすお金もない」までを見せる。ここで扱うのはパン屋さんの1本だけで、すべての仕事に当てはめない(バスや水道で働く人のお金は別の通り道になる。想定問答を参照)。続けて4番目の節(お金がわたらないはたらき)を読み、話し合いの問い②「お金がもらえないはたらきには、ねうちがないのか」を全体で3分ほど扱う。結論は出さない。 |
| 展開2 | 11 | ワークシート①〜④に取り組ませる。①②は自分の一日を支えた仕事、③は自分の係・当番、④は学校や町の中でお金がわたらないはたらき。金額は一切書かせない。書いたものは班の中で見せ合うところまでにし、全体発表はさせない。 |
| 展開3 | 10 | 本文の5番目の節(もらえるお金の決まり方)を扱う。ここのねらいは、決まり方を1つの法則にまとめないこと。「できる人が少ない」と「その仕事で動くお金の大きさ」は別の仕組みなので、別々に確かめる。そのうえで「大へんだからたくさんもらえるとはかぎらない」を必ず添える(あぶない仕事や夜の仕事をしている人を知っている児童の実感と、まっすぐぶつかるため)。決まり方には大人にも説明しきれないところがある、というところで止め、1つの理由で言い切らない。続けて話し合いの問い①を全体で扱う。額の大きさを、えらさや努力の量に置きかえないよう、本文の「受け取るお金が大きいからえらい、ということではありません」に言い方を戻す。特定の職業の額は挙げない。 |
| まとめ | 6 | ワークシート⑤の○×を手がかりに、「はたらく」と「お金をもらう」がいつもセットではないことを全体で確かめる。どの仕事が良い・えらいという結論は出さない。最後に、こども向けページ(/kids/work-and-earning)の「ふりかえってみよう」3項目を配り、声に出して読み合わせる(できた/できないの採点にはしない)。 |
時間が足りない場合は展開の後半を削り、まとめは削らないでください。「では何ができるか」まで扱わずに終えると、不安だけが残ります。
準備するもの
- ワークシートの印刷(クラス人数分)。指導案ページ(/for-teachers/work-and-earning)の「ワークシートだけ印刷する」から出せます
- 黒板に書く「学校の一日」の表(登校・給食・そうじ・下校の4つの欄)と、お金の通り道の矢印(買った人 → お店 → 作った人)
ワークシート:だれかの おかげで できて いること
- 今日、学校に 来てから いままでに、自分の ために はたらいて くれた 人を 3つ 書きます。人の 名前ではなく、仕事の 名前で 書きます(れい:パンを 作る 人)。
- 3つの うち 1つを えらびます。その 人が いなかったら、自分は 何に こまるかを 書きます。
- 自分が 学校で して いる 係や 当番を 1つ 書きます。それで だれが たすかるかも 書きます。まだ 決まって いない ときは、これから やって みたい 係を 書いても かまいません。
- 学校や 町の 中で、お金は もらわないけれど だれかの 役に 立って いる はたらきを 1つ 書きます(れい:あいさつ当番、公園の ごみひろい)。
- 「はたらく」と「お金を もらう」は いつも セットでしょうか。○か×を つけて、そう 思う りゆうを 一言 書きます。
話し合いの問い(答えは1つではありません)
- 同じ 時間 はたらいても、受け取る お金が ちがうのは なぜでしょう。
- お金が もらえない はたらきには、ねうちが ないのでしょうか。
評価の観点
観点別評価の規準として使えるように、ねらいと、それを見取る材料を対応させています。
| 観点 | 評価規準 | 何で見取るか |
|---|---|---|
| 知識・技能 | はたらくとは、だれかの役に立つことをして、そのぶんのお金を受け取ることだと言える。 | 展開1で「はたらく=だれかのこまることをへらす」を確かめるときの発言と、まとめでワークシート⑤の○×とその理由を全体で確かめるときの発言。 |
| 思考・判断・表現 | お金がわたるはたらきと、わたらないはたらきの両方があることを、自分の挙げた例で説明できる。 | ワークシート①②(お金がわたるはたらき)と④(わたらないはたらき)の記述。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 身のまわりの仕事に目を向け、自分にもできる「役に立つこと」を考えようとしている。 | ワークシート③の記述と、展開1の終わりに扱う話し合いの問い②での発言。 |
指導上の配慮
- 家の人の仕事を書かせたり、発表させたりしないでください。職業は家庭の経済状況と結び付いて読まれます。板書も、児童の家庭とつながらない一般的な仕事の名前にそろえてください。
- お手伝いをするとおこづかいがもらえる、という前提で進めないでください。もらう家庭も、もらわない家庭もあります。「お手伝いはお金と交換するもの」という形にすると、そうしていない児童の家が変わっているように見えます。
- ワークシート④は、学校や町の中から書かせてください。場面を指定しないと、直前に読んだ「家でごはんを作る」に引かれて家庭の話に集まります。書いたものを班で見せ合う設計なので、家の中のことが並ぶ形は避けます。
- ワークシート③で、係や当番が決まっていない児童がいます。「これからやってみたい係」で構わないと、書く前に全体に伝えてください。空欄のまま評価に出さないためです。
- お金の大きさの話を、児童が知っている実在の店や会社に当てはめさせないでください。「あの店ははやっている・いない」という比較は、その店をやっている家の児童が教室にいると、その子の家の話になります。本文も、特定の店どうしを比べない書き方にしてあります。
- 仕事に上下をつけないでください。受け取るお金の大きさは、いくつもの理由が重なって決まります。えらい・えらくないの話に置きかえないでください。
- 賃金や時給の金額は出さないでください。この単元は金額を扱わずに成り立ちます。数字を出すと、家庭の収入の話に引き寄せられます。
- 「はたらかない人はいけない」という説教にしないでください。病気やけが、仕事を探している最中など、はたらいていない事情はいくつもあります。教室にも、そういう家庭の児童がいます。
- 将来つきたい仕事を書かせる活動は、この時間では行いません。「いまの自分にできる、役に立つこと」までにとどめると、家庭の事情に踏み込まずに済みます。
タネとチエ https://tanetochie.com/for-teachers/work-and-earning/