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タネとチエ

所得税に上乗せされる税が、2027年1月に入れ替わります

所得税には、所得税そのものとは別に、その税額を元にして計算する税が上乗せされています。いま乗っているのは復興特別所得税です。2027年1月1日から、この上乗せの中身が入れ替わり、復興特別所得税の率が下がるかわりに防衛特別所得税が加わります。合計の率は動かないので、引かれる金額の側はこの改正だけを見るかぎり変わりません。変わるのは、税目の数と、課税期間のほうです。

コラム

公開

何が、いつから変わるのか

給与から引かれる所得税、利子や配当から引かれる所得税、確定申告で計算する所得税。そのどれにも、いまは復興特別所得税が上乗せされています。上乗せの計算は所得に対してではなく、基準所得税額——つまり所得税の額そのもの——に率を掛ける形です。

所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)が2026年3月31日に公布され、この上乗せの部分の施行日が2027年1月1日とされています。公開の時点では、まだ施行されていません。

  • 復興特別所得税(個人)の率 — 基準所得税額の2.1%から、1.1%に下がります。
  • 防衛特別所得税(個人)— 基準所得税額の1%が新しく加わります。個人については令和9年分以後の各年分に課されるとされています。
  • 復興特別所得税の課税期間 — 令和19年分までとされていたものが、令和29年分までになります。
  • 源泉徴収 — 2027年1月1日以後に行うべき徴収から、所得税と併せて徴収されるとされています。

「いつの分から」の切り方が、2つあります

申告の側は「年分」で切られていて、源泉徴収の側は「徴収を行うべき日」で切られています。根拠になっている条文が別で、片方は令和9年分以後の各年分、もう片方は2027年1月1日以後に行うべき徴収から、という書かれ方です。同じ日を指してはいるのですが、切り方が違うので、資料によって言い方が変わって見えることがあります。

合計は変わりませんが、同じではありません

上乗せの合計を見ると、いまは2.1%、施行後は1.1%と1%を足して2.1%です。同じ値になります。

いずれも基準所得税額に対する率です。復興財確法と防衛財確法の条文(e-Gov法令検索)によります。施行後の値は、まだ施行されていない条文を時点指定で確認したものです。
時期復興特別所得税防衛特別所得税上乗せの合計
2027年1月1日より前2.1%(まだ置かれていません)2.1%
2027年1月1日以後1.1%1%2.1%

合計が同じなので「何も変わっていない」と読むこともできるのですが、それだと落ちるものが2つあります。1つは、上乗せが1つの税から2つの税に分かれること。もう1つは、復興特別所得税の課税期間が延びたことです。

課税期間のほうは、率の引下げとは別の変更です。令和19年分までとされていた終わりが、令和29年分までになりました。同じ日に施行されるので1つの改正のように見えますが、率を下げる話と、いつまで課すかの話は、別々に決まっています。

合計が同じことと、同じ制度であることは別です

引かれる金額が同じでも、何という税がいつまで課されるかは変わっています。合計の側だけを見ていると、この2つはどちらも見えません。逆に言うと、内訳の側だけを見て「増えた」と読むのも、同じくらい実際からずれます。

上乗せの合計率が動かないので、この改正を理由に、売る時期や受け取る時期を前に倒す・後ろにずらす、という話は、少なくとも率の側からは出てきません。時期を動かす理由があるとすれば、それはこの改正とは別のところにある、という整理が扱いやすいと思います。

どこに現れるか

上乗せが現れるのは、所得税が引かれる場面と、所得税を計算する場面です。給与や賞与から引かれるとき、利子や配当から引かれるとき、確定申告で税額を出すとき。いずれも、所得税の額が先に決まって、そこに率を掛けます。

上場株式等の譲渡益や配当にかかる税(譲渡益課税)は、20.315%という言い方でまとめて語られることが多い場面です。この数字の中に、上乗せの分も入っています。

内訳のうち上乗せの部分は、基準所得税額に対する率ではなく、所得税15%にその率を掛けた実効の値です(本サイトが算出した参考値)。合計は改正の前後で1桁も動きません。
時期内訳合計
2027年1月1日より前所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%20.315%
2027年1月1日以後所得税15%+防衛特別所得税0.15%+復興特別所得税0.165%+住民税5%20.315%

見た目で変わるのは、内訳の書かれ方です。合計を見ているかぎり違いは出ないので、去年の書類と見比べたときに行が増えている、という形で気づくことになります。

誰に関係して、誰に関係しないか

上乗せは基準所得税額に率を掛けたものなので、元になる所得税が生じなければ、上乗せも生じません。所得税が生じていない人に、この改正で新しく負担が生じるわけではない、ということになります。

住民税は、この上乗せの対象ではありません。国税である所得税の額に掛かる税なので、住民税の側は今回の改正では動きません。譲渡益の内訳でも、住民税の部分は前後で同じです。

法人の側は、別の税です

法人については、所得税に上乗せする防衛特別所得税とは別に、法人税に上乗せする防衛特別法人税が置かれている。名前が似ていますが、掛かる元の税が違う別系統の話で、個人の所得税の上乗せとは分けて決められています。ここでは扱いません。

源泉徴収をする側——給与を払う人や、利子・配当を払う人——は、徴収と納付の手続きが変わります。手続きの中身は国税庁が源泉徴収関係のQ&Aとして出しているので、実務はそちらで確認することになります。本サイトは手続きの手引きは扱いません。

では、何ができるか

  1. 切り替わるのが2027年1月だと知っておく。それ以降の書類は、内訳の書かれ方が変わります。
  2. 給与明細や年間取引報告書は、名前の並びではなく合計で見比べる。名前が増えたことだけを見ると、増えたのか減ったのかが分からなくなります。
  3. 所得税が生じていない場合は、上乗せも生じません。自分に関係するかどうかは、そこで分かれます。
  4. 源泉徴収をする側なら、徴収と納付の手続きを国税庁の資料で確認する。この記事は手続きまでは扱っていません。

上乗せの合計が動かない以上、この改正のために家計の側で何かを組み替える、という話にはつながりにくい改正だと思います。知っておくと効くのは、書類の見た目が変わったときに慌てないで済むところと、復興特別所得税がいつまで課されるかが変わったところです。

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出典

  1. [1]デジタル庁 e-Gov法令検索東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法 第9条・第13条(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)現行の復興特別所得税は基準所得税額の100分の2.1。2027年1月1日施行の改正後は100分の1.1で、課税期間は令和29年分まで。
  2. [2]デジタル庁 e-Gov法令検索我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法 第5条の5・第5条の9・第5条の26(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)令和8年法律第12号(令和8年3月31日公布)による改正後の条文が2027年1月1日施行。個人の防衛特別所得税は基準所得税額の100分の1で、令和9年分以後の各年分に課される。URL を開くと既定では現行時点の条文が表示され、防衛特別所得税を定める第三章の二は現れない。条文を確かめるときは e-Gov の時点指定で2027年1月1日時点に切り替えること。
  3. [3]国税庁防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)令和8年5月。防衛特別所得税は源泉徴収すべき所得税額の1%、復興特別所得税は2.1%から1.1%へ引下げ、課税期間は令和29年12月31日まで延長。令和9年1月1日以後に生ずる所得から適用され、合計の2.1%は変わらない。