住宅ローンは「借りられる額」と「返せる額」が違う
住宅を探していると、先に「いくら借りられるか」が分かります。しかし、その額は家計にとって無理なく続く額を示すものではありません。審査と家計では、見ているものが違うからです。
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審査額は、家計の予算ではない
金融機関が出す借入可能額は、申込時点の収入や返済負担などから、その金融機関の基準で決まります。一方、家計が返済を続けられるかは、暮らしに必要な支出と、これから変わりうる収入を含めて考えなければ分かりません。出発点が異なります。
審査を通ったことは、返済が続くことの保証ではありません。逆に、借入可能額より少なく借りることが正しい、とも一律には言えません。住まいに何を求めるか、ほかにどの支出があるか、収入の変動をどう受け止めるかで、許容できる負担は変わるためです。
2つの数字を別に置く
借入可能額は、資金計画を考え始めるための情報です。家計に置くべきなのは、毎月の住居費を払いながら、ほかの支出や貯蓄を続けられるかという数字です。同じ欄に置くと、審査額がそのまま予算に見えてしまいます。返済額だけでは、住居費にならない
住宅ローンの毎月返済額は、購入後に出ていくお金の一部です。持ち家には、税金、保険、管理費や修繕積立金、設備や建物を直す費用などもあります。物件の種類によって続く費目は異なり、返済額だけを家賃と並べても、住居費の比較にはなりません。
| 比べる段階 | 見るもの | 抜けると何が起きるか |
|---|---|---|
| 借入額を決める前 | 収入、ほかの借入、頭金など | 借入の条件だけで、暮らしの支出が残る |
| 毎月の負担を見る | ローン返済、管理費、税金、保険など | 返済額だけを住居費だと思い込む |
| 長く続けられるかを見る | 教育費、働き方、収入の変化、修繕など | ある時期だけ家計が苦しくなる |
賃貸と持ち家を比べるときも、同じ整理が使えます。住む場所と、住まい方では、家賃と持ち家で消えていく費目を分けて扱っています。
返済期間の途中で変わる条件
借入時点の家計が成り立つだけでは足りません。子どもの進学、転職や働き方の変更、病気や介護、金利の変動は、返済期間の途中で家計を変えます。どれが起きるかを当てる必要はありませんが、どの時期に支出が重なりうるかは分けて置けます。
- 収入が一時的に減ったとき、住居費以外の生活費を残せるか。
- 教育費などの大きな支出と返済が重なる時期に、手元資金を減らしすぎないか。
- 変動金利を選ぶ場合、返済額が変わる条件を契約で確認し、数字を変えた試算でも家計が続くか。
- 住み替えが必要になったとき、売却や賃貸への移行に時間と費用がかかることを織込めるか。
これは、悪い出来事を前提に購入を止めるための確認ではありません。1つの条件だけで出した返済額を、家計の結論にしないための確認です。条件を変えたときに何が先に苦しくなるかが分かれば、物件、借入額、時期のどこを見直す話なのかを切り分けられます。
試算は、答えを出す道具ではない
試算で出せるのは、置いた条件での毎月返済額と総返済額です。将来の収入、物価、修繕の時期、住み替えの必要までは決めてくれません。そのため、1つの結果を「払える」と読むより、条件を変えたときに結果がどれだけ動くかを見るほうが、家計に使いやすくなります。
借りられる額をどう扱うか
- 問 金融機関が示した借入可能額は、資金計画では使えないのか
- 答 使えます。ただし、それは審査の前提で出た上限に近い情報です。物件を探す範囲を考える手がかりと、家計で続けられる住居費を決める材料は、分けて扱う必要があります。
- 問 毎月の返済額が家賃より低ければ、返せると考えてよいのではないか
- 答 それだけでは足りません。上の説明は返済額に寄りすぎています。持ち家で続く費目と、返済期間中に変わる家計の条件が抜けています。家賃との差ではなく、購入後の住居費全体と、支出が重なる時期を並べて見る形になります。
- 問 将来が読めないなら、試算しても意味がないのではないか
- 答 将来を当てるための試算ではありません。収入や金利などの条件を変えたとき、返済額と残高がどう動くかを確認するものです。動いた結果を見て、どの条件に家計が弱いかを把握できます。
家計に置き直して確かめる
- 借入可能額と、購入後の毎月の住居費を別の欄に書く。
- 住居費には、返済額以外に続く費目を加える。物件ごとに分からない費目は、確認が必要な項目として残す。
- 教育費や働き方の変化など、支出または収入が動きそうな時期を家計の流れに重ねる。
- 金利や返済期間などの条件を変えて、毎月の負担と残高の動きを比べる。
- 数字で決まらない住み続けたい理由や、住み替えられる余地も別に書く。
住宅ローンシミュレーターでは、借入額、金利、返済期間を変え、元利均等と元金均等、繰上返済の違いも確認できます。ここで出た返済額を、そのまま借入額の結論にせず、上の項目と一緒に家計へ戻して見るために使います。
出典
- [1]住宅金融支援機構「フラット35利用者調査(新しいタブで開きます)」(利用条件: 引用等を除き無断転載は不可。引用の際は出所の明示が必要(新しいタブで開きます))