本文へスキップ
タネとチエ

NISA と iDeCo、制度そのものの見取り図

NISA と iDeCo は、どちらも商品の名前ではありません。中に何を入れるかとは別に、入れ物のほうで税の扱いが変わる仕組みです。ここが混ざったまま話をすると、「どっちが良いか」という問いになってしまい、比べようのないものを比べることになります。このページでは、2つがどういう性質の器なのかだけを並べます。どちらを先に使うか、いくら入れるかは扱いません。

解説

最終更新

「器」と「中身」は別の話

NISA も iDeCo も、それ自体が何かを運用してくれるものではありません。どちらも口座の種類で、その中で買ったものについて税の扱いが変わります。中に何を入れるかは、器を選んだあとに別に決めることになります。

同じ投資信託を、課税口座で買うことも、NISA で買うことも、iDeCo で買うこともできます(それぞれの制度で買えるものの範囲には違いがあります)。買うものが同じでも、置く場所によって手元に残る額が変わる、というのがこの2つの制度の効きどころです。

「NISA で増える」という言い方のずれ

広告や会話では「NISA を始める」「NISA で増える」という言い方をよく見かけます。実際に増えたり減ったりするのは中身のほうで、器は税の扱いを変えるだけです。増える仕組みを器の側に期待すると、中身を選ぶ段階が飛んでしまいます。

何に税がかからないのか

課税口座では、売却して得た利益や受け取った分配金に20.315%(内訳は所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)がかかります。NISA と iDeCo は、どちらもこの運用益への課税がありません。ただし、税が軽くなる場所は同じではありません。

  • NISA — 運用益に課税されません。入れるときのお金は、税を納めたあとの手取りから出します。受け取るとき(売るとき)にも課税されません。
  • iDeCo — 運用益に課税されないことに加えて、拠出した掛金が全額、所得控除の対象になります。そのぶん、その年の所得税と住民税が軽くなります。一方、受け取るときには課税関係が生じます。

iDeCo の所得控除は、納める税があってはじめて効きます。課税所得がない年は、この部分の軽減は生じません。その場合に残るのは運用益が非課税であることで、口座管理手数料は課税所得の有無にかかわらずかかります。

受け取るときの扱いは、一時金として受け取るか年金として受け取るかで、効く控除が変わります。入れるときに軽くなった分だけでは差し引きが決まらない、というのがここの要点です。受け取り方そのものは別のページで扱っています。

出せるか、出せないか

いちばん大きな違いは、税ではなく引き出しのほうにあります。NISA は保有しているものをいつでも売却して引き出せます。iDeCo は老齢給付金を受け取る仕組みなので、原則として60歳まで引き出せません。受け取り始める時期の上限は75歳です。

60歳になれば必ず請求できる、というわけでもありません。請求できる年齢は加入していた期間(通算加入者等期間)で決まり、期間が短いと段階的に繰り下がります。

これは優劣ではなく、性質の違いです

「出せる」ほうが良い、とは決まっていません。使う時期が決まっているお金や、急な出費に備えるお金を置く先としては、出せない器は向きません。一方で、出せないことが結果として途中で使ってしまうことを防ぐ、という見方もあります。同じ性質が、人によって逆の顔で出てきます。

枠の作りが違う

NISA の枠は、年間の上限と生涯の上限の二階建てになっています。年間はつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円で、あわせて360万円まで。生涯では1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、この生涯の枠は買った値段(簿価残高)で管理されます。含み益が乗っても枠を圧迫しません。

保有できる期間は無期限、口座を開設できる期間は恒久化(期限なし)です。売却すると、その簿価の分の枠が翌年以降に戻ります(戻った枠を使う年にも、年間投資枠の上限はかかります)。

iDeCo の枠は、生涯いくらという形ではなく、月額の上限で決まっています。しかも額は一律ではなく、公的年金のどの区分にいるか、勤務先に企業年金があるかで変わります。現行の上限は区分によって月20,000円から月68,000円までの幅があります。

  • 第1号被保険者・任意加入被保険者 — 自営業者、フリーランス、学生など
  • 第2号被保険者(企業年金なし) — 勤務先が企業型DC・確定給付企業年金のいずれも実施していない会社員
  • 第2号被保険者(企業年金あり) — 勤務先が企業型DC または確定給付企業年金を実施している会社員、公務員
  • 第3号被保険者 — 会社員・公務員に扶養されている配偶者

2026年12月から拠出限度額が引き上げられ、加入可能年齢も70歳になるまでに拡大されます(60歳以上は一定の要件を満たす場合)。引き上げの対象は全区分ではありません(第3号被保険者は改正の前後で同じ額です)。区分ごとの額は別のページに整理しています。企業年金がある場合は、他の制度と合わせた上限から会社が出している分を差し引いた残りが自分の枠になるため、表の額をそのまま入れられるとは限りません。

使った枠が戻るかどうかも違います

NISA は売却すると簿価の分だけ枠が戻りますが、iDeCo に拠出した分の枠は戻りません。月額の上限は毎月やってくるので、「使わなかった月の分を翌月にまとめる」という形にもなっていません。

並べて見る

枠と限度額は金融庁「NISAを知る/新しいNISA」、iDeCo の限度額と加入できる年齢は厚生労働省「iDeCoがパワーアップします!(令和8年12月からの拠出限度額引き上げ)」、受け取り始められる年齢は確定拠出年金法(デジタル庁 e-Gov法令検索「確定拠出年金法 第33条・第34条・第73条(老齢給付金の支給要件と支給の方法)」)によります。手数料の額は運営管理機関によって違うため、ここでは金額を持ちません。
NISAiDeCo
税が軽くなるところ運用益(売却益・分配金)が非課税運用益が非課税。加えて拠出した掛金が所得控除の対象。受け取るときに課税関係が生じる
引き出しいつでも売却して引き出せる原則60歳まで引き出せない。受け取り始める時期の上限は75歳
年間の上限つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円(あわせて360万円)月額で決まり、区分によって違う(現行は月20,000円から月68,000円)
生涯の上限1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)生涯いくらという形の上限は持たない。拠出できる期間と月額で決まる
使った枠売却すると簿価の分が翌年以降に戻る拠出した分の枠は戻らない
期間の区切り保有期間は無期限、口座開設期間は恒久化(期限なし)公的年金の被保険者であることと、加入できる年齢の上限がある
かかる費用中身の商品にかかるコスト中身の商品にかかるコストに加えて、口座管理手数料が加入時と毎月かかる

NISA の損失は、他の利益と相殺できません

NISA 口座の中で生じた損失は、課税口座の利益との損益通算も、翌年以降への繰越控除もできません。利益が出なかった場合には、非課税という性質が働く場面がない、ということでもあります。

未成年の枠の作り

NISA 口座を開設できる年齢の下限を撤廃する改正が決まっており、2027年1月以後の口座開設・勘定設定から適用されます。法令上は非課税口座に設けられる「未成年者特定累積投資勘定」で、「こどもNISA」は通称です。

  • 17歳までの間(その年1月1日時点の年齢で判定します)の年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円。
  • 買えるのは積立・分散投資に適した一定の公募等株式投資信託(つみたて投資枠と同一)。
  • その年1月1日において18歳である年から、手続きなしに成人のつみたて投資枠・成長投資枠に切り替わる。

成人の枠とは別枠で増えるわけではなく、成人の枠に切り替わったあとは成人の限度額の管理に移ります。払い出しにも条件が付くので、大人の NISA と同じ器だと思って読むとずれます。詳しくは子どもの資産形成のページにまとめています。

出せないことを、どう見るか

ここまでの違いのうち、判断が分かれるのは「引き出せない」という性質の評価です。同じ事実を、利点として読む人と、負担として読む人がいます。どちらの読み方にも理屈があります。

縛りとして読む理屈

  • 相場が下がったときに売って降りる、という選択肢がそもそも無い。判断の回数が減る。
  • 生活費の口座と物理的に切り離されるので、目的以外に使われにくい。
  • 受け取る時期が老後に固定されているぶん、老後のための資金として数えやすい。

負担として読む理屈

  • 動かせないお金が増えると、失業・病気・転居のような途中の出費に対応しにくくなる。
  • 掛金を止めることはできても、入れた分を取り出すことはできない。手数料は残る。
  • 制度が向いているかどうかが、収入の安定度によって変わる。誰にとっても同じ性質ではない。

この評価を分けるのは、資産の大きさではなく、使う時期の決まっていないお金がどれくらいあるかです。生活防衛資金と、数年以内に使う予定のあるお金が別に置けているなら、引き出せないことの負担は小さくなります。そこが薄いうちは、同じ性質が重く出ます。

「どちらを先に使うか」「非課税の枠に何を入れるか」は、ここから先の話です。答えが1つに決まらない論点として別に整理してあるので、そちらに続きます。

「どっちが良いか」に見えてしまうところ

何を確かめれば、自分の枠が分かるか

見取り図の段階でできるのは、自分の枠がいくらかを確かめるところまでです。金額を決めるのはそのあとになります。

  1. NISA の枠は、年齢と口座の有無だけで決まります。年間と生涯の上限は誰でも同じです。
  2. 自分が公的年金のどの区分にいるかを確かめます(自営業か、会社員・公務員か、扶養されている配偶者か)。iDeCo の上限はここで変わります。
  3. 会社員なら、勤務先に企業型DC や確定給付企業年金があるかを確かめます。あるなら、加入者サイトで事業主掛金の月額を見ます。差し引いた残りが自分の枠です。
  4. 使う時期の決まっていないお金がどれくらいあるかを見ます。引き出せない器をどう評価するかは、ここで変わります。

器の違いが手取りにどれくらい効くのかは、前提を置いた試算で大きさだけを見ることができます。前提を動かすと結果も動くので、数字そのものより、どの前提で変わるかを見る使い方になります。

このページの内容へもどる

出典

  1. [1]金融庁NISAを知る/新しいNISA(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)
  2. [2]厚生労働省iDeCoがパワーアップします!(令和8年12月からの拠出限度額引き上げ)(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)2026年12月から拠出限度額の引き上げと加入可能年齢の拡大が行われる。
  3. [3]デジタル庁 e-Gov法令検索確定拠出年金法 第33条・第34条・第73条(老齢給付金の支給要件と支給の方法)(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)老齢給付金を請求できる年齢の下限(第33条)と、請求しないまま到達したときに支給される年齢の上限(第34条)。個人型(iDeCo)には第73条が準用する。上限は令和2年法律第40号により2022年4月1日から70歳が75歳になった。
  4. [4]金融庁令和8(2026)年度税制改正について(税制改正大綱における金融庁関係の主要項目)(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)つみたて投資枠の対象年齢見直し(0〜17歳・年間60万円・非課税保有限度額600万円)を掲載。令和9年から。
  5. [5]財務省令和8年度税制改正の解説(租税特別措置法等(所得税関係)の改正)(新しいタブで開きます)(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます)所得税法等の一部を改正する法律は令和8年3月31日に成立・公布。未成年者特定累積投資勘定の要件を条文単位で解説している。