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タネとチエ

リバランスとは何か

資産をどう分けるかを決めて積み立てを始めても、その比率は値動きで少しずつ動いていきます。ずれたら元の比率に戻す作業を「リバランス」と呼びます。やり方はいくつかあり、どれが正しいという決まりはありません。ここでは、何のための作業で、何は期待できないのかを先に分けてから、戻し方の型を並べます。

解説

最終更新

配分は、決めたままにはならない

株式と債券のように、値動きの違うものを組み合わせて持つとき、どれにどれだけ置くかを決めることをアセットアロケーションと呼びます。決めるのは金額ではなく比率です。ところが、持っているものの値段はそれぞれ別々に動くので、何もしなくても比率は動きます。

架空の例で見ます。始めたときの全体を100として、株式50%・債券50%で持ったとします。その後、株式だけが上がった場面と、株式だけが下がった場面を並べると、次のようになります。

架空の数字による例です。実在の商品や指数の値動きではありません。始めたときの全体を基準にした量で、税・手数料は含んでいません。
場面株式債券株式の比率決めた比率に戻すには
始めたとき505050%―
株式が1.5倍になった755060%株式を12.5売って債券を買う
株式が0.5倍になった255033%債券を12.5売って株式を買う

自分では何も売り買いしていないのに、上がった場面では株式の比率が決めたより高く、下がった場面では低くなっています。ずれの向きは、どちらが大きく動いたかで決まります。ずれの大きさは、組み合わせたもの同士の値動きの差が大きいほど、そして放っておく期間が長いほど、大きくなりやすいと言われます。

ずれると、何が変わるのか

比率を決めたときには、「これくらいの上下なら続けられる」という見込みがあったはずです。値動きの大きい側の比率が上がると、全体のふれ幅もその分大きくなります。上の例で株式が上がった場面は、資産が増えた場面であると同時に、決めたときより大きなふれ幅を引き受けている場面でもあります。ふれ幅とリスクの関係はリスクとは何かで扱っています。

逆に、株式が下がった場面では、全体のふれ幅は決めたときより小さくなっています。こちらは「減った」ことのほうが目に入りやすく、比率が動いていることには気づきにくい、という違いがあります。

ずれは、失敗の印ではありません

値動きの違うものを組み合わせている以上、比率が動くのは仕組みどおりのことです。ずれたこと自体を気に病む必要はなく、ずれたときにどうするかを先に決めておけるかどうか、のほうが扱える問題です。

リバランスがすること、しないこと

ずれた比率を、決めた比率に戻すのがリバランスです。何のための作業かは、期待できることとできないことを分けておくと読み違えにくくなります。

  • すること: 全体のふれ幅を、決めたときの水準に近づける。上がった側の比率を下げ、下がった側の比率を上げる。
  • すること: 「いつ、どれだけ動かすか」を、その場の気分ではなく先に決めた規則に移す。
  • しないこと: リターンを上げる約束。上がった側を売って下がった側を買うので、結果として高く売って安く買う形にはなりますが、上がった側がその後も上がり続けた場合は、戻さなかったほうが大きく増えていた、ということも起こります。
  • しないこと: 下落を防ぐこと。持っているものが全部同時に下がる局面では、比率を戻しても全体は下がります。
  • しないこと: ただで済むこと。売るときに税がかかる場合があり、手間もかかります(下の節)。

リバランスは、増やすための作業というより、決めたリスクの水準を保つための作業だと説明されます。 そう置くと、「やったのに増えなかった」は失敗ではなく、「やらなかったのに増えた」も成功とは限らない、という読み方になります。

Q:ずれたら戻すか、ずれに任せるか

A:戻す側の理屈
  • 決めたときのふれ幅を保てる。比率を決めた理由が変わっていないなら、ずれたままにしておく理由も薄い。
  • 下がった側を買い足す行動が、規則として先に決まる。下落の局面でその場の判断に頼らずに済む。
  • 放っておくと値動きの大きい側の比率が上がり続け、気づいたときには決めた水準からかなり離れている、ということを避けられる。
A:ずれに任せる側の理屈
  • 戻すとは、伸びた側を手放すことでもある。伸び続ける局面では、戻さなかったほうが結果が大きくなることがある。
  • 課税口座で利益の出ているものを売るたびに税がかかり、本来なら先に延ばせた分を前払いすることになる。
  • 使うまでの時期が遠く、ふれ幅が大きくなっても続けられるなら、戻す必要そのものが薄い。
  • 年齢や暮らしの変化で比率を見直すつもりなら、戻す先の比率がそもそも変わる。

どちらの列も、同じ事実(戻すとふれ幅は保たれ、伸びた側の伸びは一部手放す)を別の側から見ています。効いてくるのは、「決めた比率を、いまも自分の比率だと思えるか」です。そう思えるならずれは戻す対象になり、そう思えないなら、先に比率のほうを決め直す話になります。比率を決めるところは債券を持つ意味で扱っています。

戻し方の3つの型

戻すと決めた場合のやり方は、大きく3つの型に分けて紹介されることが多いです。並べた順に優劣はありません。組み合わせて使う人もいます。

3つの型の特徴を並べたもので、どれを選ぶとよいかを示すものではありません。時期や幅を具体的にいくつにするかは、ここでは示していません。
型何をきっかけに動くか売るか弱いところ
時期で戻す(定期)あらかじめ決めた時期が来たら、ずれの大きさにかかわらず戻す売ることが多いずれが小さくても動く。時期と時期の間に大きく動いても待つことになる
ずれ幅で戻す(閾値)決めた比率から、決めた幅以上ずれたときだけ戻す売ることが多いずれを見張る必要がある。幅の決め方に正解がない
売らずに向き先で戻す新しく入れるお金を、比率が下がった側に多めに向ける(取り崩しの時期なら、比率が上がった側から引き出す)売らない入れるお金や引き出す額に比べてずれが大きいと、戻りきるまで時間がかかる

Q:時期で決めるか、ずれ幅で決めるか

A:時期で決める側の理屈
  • いつ動くかが決まっているので、忘れにくく、予定に組み込める。
  • 見張る必要がない。時期が来るまで、値動きを見なくてよい。
  • 判断が入る場面が「時期が来たら戻す」の1つだけになる。
A:ずれ幅で決める側の理屈
  • ずれが小さい時期は何もしないので、売る回数とそれに伴う税・手間が減りやすい。
  • 大きく動いた局面では、次の時期を待たずに戻せる。
  • 「ずれたから戻す」という理由がはっきりしていて、作業の意味が分かりやすい。

Q:売って戻すか、入れるお金の向き先で戻すか

A:売って戻す側の理屈
  • その場で決めた比率に戻る。ずれが大きいときでも届く。
  • 積み立てを終えたあとで、新しく入れるお金がない時期にも使える。
  • 入れる額が小さくても、比率の管理が入金の額に縛られない。
A:向き先で戻す側の理屈
  • 売らないので、課税口座でも戻すことそのものでは税が発生しない。
  • NISA の口座の中で売り買いを繰り返さないので、枠の出入りを考えなくて済む。
  • 伸びた側を手放す作業がないので、心理的な抵抗が小さい。
  • 積み立てを続けているあいだは、毎回の買い付けの配分を変えるだけで済む。

型を選ぶときに効いてくるのは、次のような条件です。

  • いま積み立てている時期か、取り崩している時期か、どちらでもない時期か。入れるお金や引き出すお金があるかで、売らずに戻せるかが変わる。
  • 戻すために売ることになるものが、どの口座に入っているか。課税口座か NISA かで、売ったときに起きることが違う。
  • ずれをどこまでなら放っておけるか。小さなずれを気にしないなら、動く回数は少なくて済む。
  • どれだけの頻度で、口座を開いて作業できるか。続けられない規則は、決めても働かない。

取り崩しの時期に、どの資産から引き出すかを比率の管理と合わせて考える話は出口戦略のほうにあります。条件を変えて、方式ごとに配分がどう動くかを確かめたいときは見直しとリバランスの試算が使えます。

売るときに起きること

売って戻す場合は、どの口座で売るかによって、ついてくるものが変わります。特定口座などの課税口座で、値上がりしたものを売ると、その利益に20.315%の税がかかります。持ち続けていれば先に延ばせた税を、戻すたびにその時点で払うことになります。売るものに利益が出ていなければ、この税はかかりません。

NISA の口座の中で売ったときは、利益に税はかかりません。その代わりに、枠の扱いがついてきます。保有商品を売却すると、その簿価分の枠が翌年以降に復活します(年間投資枠の上限は別途かかります)。売ってすぐに別のものを買い直す形で戻そうとすると、その年のうちには枠が足りない、ということが起こりえます。

売らずに向き先で戻す型が、課税口座や NISA と組み合わせて語られることが多いのは、このためです。一方で、売らない型だけでは戻しきれないほどずれた場合には、税や枠の扱いを分かったうえで売る、という選び方もあります。どちらを重く見るかは、上の判断軸と同じところに戻ります。

商品によっては、売り買いに手数料がかかります

投資信託には売り買いの手数料がかからないものもある一方、上場している商品(ETF など)は売り買いのたびに手数料がかかる場合があります。どちらも、かかるかどうかは商品と金融機関ごとに確かめることになります。戻す回数が増えるほど、この分も積み重なります。

1本で持つときは、中で行われている

株式と債券などを決まった比率で組み合わせた投資信託(バランス型と呼ばれるもの)は、その比率を保つための売り買いをファンドの中で行っています。持っている人が自分で戻す作業をする必要はありません。

ただし、戻す先の比率を決めているのはファンドです。自分の状況が変わって、望む比率が変わったときに、比率を選び直すのは自分の側に残ります。また、比率を保つ作業の費用は、ファンドのコストの中に含まれています。

株式だけ、債券だけのように1種類の資産だけで持つ場合は、そもそも資産の間の比率がないので、ここでいう戻す作業は生まれません。ただし、中に入っている国や会社の比率は値動きに合わせて変わっていきます。そちらは指数の規則で決まるもので、決めた比率に戻す作業とは別のものです。

残りやすい問い

リバランスについて

問 高く売って安く買うことになるなら、結局はもうかる仕組みなのではないか
答 そう説明されることもありますが、約束はされていません。上がった側がその後も上がり続けた場合、途中で売った分は伸びを取り逃がします。どちらになるかはあとにならないと分からないので、もうけを目的に置くと、うまくいかなかった年に続ける理由がなくなります。
問 増える約束がないのに、税や手間を払ってまで戻す理由はどこにあるのか
答 上の説明だけでは、得るものが見えにくいのは確かです。得るのは、ふれ幅が決めたときの水準に戻ることです。つまり、比率を決めたときの「これくらいなら続けられる」という見込みが、いまも当てはまる状態に戻ります。それに税や手間を払う価値があるかは、決めた比率をどれだけ大事に思っているかで変わります。売らない型を使えば、払うものを小さくする道もあります。
問 下がった側を買い足すのは、落ちているものを拾うようで怖い
答 その怖さは、規則を決めても消えないと言われます。だからこそ、下がる前の落ち着いているときに「こうなったらこうする」を決めておく、という考え方が紹介されます。その場で判断すると、下がっている最中ほど手が止まりやすいためです。下落の局面での向き合い方は、別の記事でも扱っています(下の節から送っています)。
問 バランス型のファンドを1本持っていれば、何も考えなくていいということか
答 戻す作業についてはそのとおりで、ファンドが行います。残るのは、その比率が自分に合っているかを見直すことです。比率はファンドが決めたもので、自分の状況が変わっても自動では変わりません。考えることの数は減りますが、ゼロにはならない、という整理になります。

では、何を決めておくか

ここまでの話を、決めておくことの形に並べ直すと次のようになります。どれも、答えは人によって違います。

  1. 戻す先の比率。これが決まっていないと、ずれたかどうかも分からない。
  2. 戻すか、ずれに任せるか。任せるなら、比率を見直す時期のほうを決めておく。
  3. 戻すなら、どの型で戻すか。時期か、ずれ幅か、入れるお金の向き先か、その組み合わせか。
  4. 売ることになったとき、どの口座の何を売るか。課税口座か NISA かで、ついてくるものが違う。

下落の局面で決めたことを守れるかどうかは、決め方そのものよりも、見る頻度や気持ちの動き方に左右されると言われます。そちらは下落したときにどうするかにまとめてあります。

この記事で扱わないこと

具体的な比率、何年に1回戻すか、何ポイントずれたら戻すか、どの商品で持つか。どれも読む人の状況で答えが変わるもので、仕組みの説明の側からは決められません。判断の材料と、決めておく項目までを書いています。

出典

  1. [1]国税庁「タックスアンサー No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))上場株式等の譲渡益は20%(所得税15%・住民税5%)。復興特別所得税は基準所得税額の2.1%。令和7年4月1日現在法令等で、令和8年度税制改正(防衛特別所得税の創設と復興特別所得税の引下げ)はまだ反映されていない。
  2. [2]金融庁「NISAを知る/新しいNISA(新しいタブで開きます)」(利用条件: 公共データ利用規約(第1.0版)(新しいタブで開きます))