「投資の種類」には、3つの軸が混ざっている
「投資の種類」を調べると、商品の名前が並んだ長い一覧に行き当たります。読んでも減っていく感じがしないのは、覚えることが多いからではなく、性質のちがうものが同じ一覧に並んでいるからかもしれません。ここでは、その一覧に混ざっている軸を分けます。どれを選ぶかは扱いません。
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「種類が多すぎる」と感じるところ
株式、債券、投資信託、不動産、金、NISA。こうして並べると、どれも「投資の種類」として説明されます。ところが、この並びの中には、同じ問いの答えになっていないものが混ざっています。
分けてみると、性質のちがう3つの軸が重なっています。
- 何に投資するか。お金を預けるのか、貸すのか、持ち分を持つのか、物やその権利を持つのか。
- どう包むか。ひとつを直接買うのか、たくさんをまとめて包んだ形で買うのか。
- どの器で持つか。利益に税がかかる口座で持つのか、税の扱いが変わる制度の器で持つのか。
この3つは、どれかを決めれば残りも決まる、という関係ではありません。同じ資産を、包み方を変えて、別の器で持つこともできます。掛け合わせると名前はいくらでも増えるので、一覧は長くなります。逆に軸ごとに見ていくと、名前の数ほどの選択はしていないことが分かります。
一覧が長いことと、選択肢が多いことは別
掛け合わせでできた名前は、軸を分けた時点で数が減ります。「種類が多くて選べない」と感じるとき、増えているのは決めることの数ではなく、名前の数のほうかもしれません。軸1 — 何に投資するか
1つめの軸は、お金をどう出すか、です。呼び名はいろいろありますが、お金の出し方で並べると、いくつかの型に収まります。
預けるのは、金融機関にお金を置いておくことです。貸すのは、国や会社にお金を貸して、利息と満期の約束を受け取ることで、債券がこの形にあたります。持ち分を持つのは、会社の一部を持つことで、株式とその集合がこれにあたります。物やその権利を持つのは、不動産やその持ち分(REIT)、金などの資源を持つ形です。
| お金の出し方 | 何をしていることになるか | 受け取りの形 | 値動きの性格 |
|---|---|---|---|
| 預ける | 金融機関にお金を置いておく | 利息。受け取れる形があらかじめ決まっている | 預けた金額そのものは動かない。そのぶん増え方も小さいと言われ、物価が上がると同じ金額で買えるものは減る |
| 貸す | 国や会社にお金を貸す(債券) | 約束された利息と、満期に戻る元本 | 金利が動くと、途中で売るときの値段が動く。貸した先が返せなくなることもある |
| 持ち分を持つ | 会社の持ち分を持つ(株式と、その集合) | 配当と、売ったときの値段の差。受け取りは約束されていない | ふれ幅が大きい。会社や経済の状態がそのまま出る |
| 物やその権利を持つ | 不動産やその持ち分、金などの資源を持つ | 賃料などの分配。物そのものからは受け取りがない場合もある | 物価や需給で動く。株式や債券と同時には動きにくいと言われる |
呼び名が増えても、出し方の側はそれほど増えません。知らない名前に出会ったときは、「これはどの出し方なのか」を先に見ると、位置が決まります。位置が決まらないときは、決まらないという事実のほうが手がかりになります。その見方は元本保証という言葉の読み方に書いてあります。
性格は、優劣ではなく見方で語る
資産の性格は、次の3つを見る、という整理が扱いやすいと言われます。定期的な受け取りがあるか。値動きの幅がどれくらいか。ほかの資産と同時に動くか。どれも「どちらが上か」を出す物差しではありません。
受け取りの形は、手元に入ってくるお金の見通しに効きます。利息や配当のように定期的な受け取りがある資産と、売るときの値段の差で結果が決まる資産があります。ただし、受け取りが多いほど有利という読み方はできません。分配金として受け取った分は、その資産から出ていった分でもあるからです。増えたかどうかは、受け取りと値段の差を足したリターンで見ることになります。
値動きの幅はリスクと呼ばれます。日常語の「危険」とは別で、上にも下にもふれる幅のことです。幅が小さい資産は増え方も小さく、幅が大きい資産は増える見込みも減る見込みも大きくなります。この対応そのものの話はリスクとは何かにあります。
同時に動くかどうかは、複数を組み合わせたときの幅に効きます。同じ方向に動くものばかりを持つと、分けて持っているつもりでも全体の幅は小さくなりません(分散投資)。性格のちがう資産を混ぜると何が変わり、何は変わらないのかは債券を持つ意味で両側から扱っています。
「性格のちがい」を「優劣」に読み替えない
ふれ幅の小さい資産を安全、大きい資産を有利、と置き換えて読むと、並べた表がそのまま順位表になります。同じ資産が、使う時期が近い人には向かず、遠い人には収まる、ということが起こります。順位は資産の側では決まりません。軸2 — ひとつを直接買うか、まとめて包んだ形で買うか
2つめの軸は、包み方です。投資信託や ETF は、資産の種類ではありません。中身をまとめて包んだ形のことで、包みの中に入っているのは、軸1で並べた資産です。株式を包んだもの、債券を包んだもの、いくつかを混ぜたものがあります。
包み方の側で決まるのは、中身の決め方(規則で決まるか、運用する人が選ぶか)、売り買いの仕方、費用の出方といったことです。中身の資産が何かは、包み方では変わりません。インデックスファンドのように規則で中身が決まる形の仕組みは、インデックスファンドという仕組みで扱っています。
「包んである」と「分かれている」は別
1本で広い範囲に分かれている包みもあり、1つの国や1つの業種に寄った包みもあります。包んだ形で買っていることは、中身が分かれていることを意味しません。中身を見る場所は、商品の名前ではなく、何に連動するかを書いた欄になります。軸3 — どの器で持つか
3つめの軸は、どの口座で持つか、です。特定口座などの課税口座と、NISA・iDeCoのように税の扱いが変わる制度の器があります。どちらも、それ自体が何かを運用してくれるものではありません。器は、中身が何かを決めません。
器の側には、入れられるものの範囲や、いつ出せるかといった条件が付きます。条件の中身はこの記事では扱いません。器どうしの違いの形はNISA と iDeCo、制度そのものの見取り図にまとめてあります。ここで押さえるのは、器を選ぶことと中身を選ぶことは、別に決められるということだけです。
軸を分けると、何ができるか
軸を分けても、どれを選ぶかは決まりません。決まるのは、いま自分がどの軸の話をしているのか、です。それが分かると、次のことができます。
- 目にした名前を、3つの軸のどこに置けるか言ってみる。置けないものがあれば、説明のどこかが足りていない、という手がかりになります。
- 人の話を、軸ごとに分けて聞く。「これがいい」と言われたとき、資産の話なのか、包み方の話なのか、器の話なのかで、確かめる先が変わります。
- 迷っている軸を1つに絞る。3つを同時に決めようとすると、別の軸の理由で別の軸の答えを出してしまいます。
軸が混ざっているあいだは、比べているつもりで別のものを比べていることがあります。分けたあとに残る問いは、はじめに感じた「種類が多すぎる」より少なく、そして自分の事情で答えを出せる形になっているはずです。
この記事で扱わないこと
次のものは、ここには置いていません。
- 個別の商品名と、その一覧。
- 過去のリターンや、資産ごとの順位。
- どの資産をどれだけ持つか、どれを選ぶべきか。
- 為替や暗号資産のように、値動きそのものを取りにいく取引の手ほどき。
どれも読む人の事情や考え方で答えが変わるもので、種類の整理の側からは決められません。ここに書いたのは、並べ方と、見る場所までです。
分けたあとに出てくる問い
- 問 軸を分けて並べても、結局どれを選ぶかは決まらないのではないか。
- 答 決まりません。上の説明が出しているのは並べ方までで、選び方は出していません。そのうえで、選ぶ前に決めておけることは増えます。いま自分がどの軸の話をしているのか、その軸で何を気にしているのか。ここが決まらないまま名前を比べると、比べた結果を自分の言葉で説明できなくなります。
- 問 軸は本当に3つだけなのか。
- 答 3つに絞ったのは、同じ一覧に並べられがちなものを取り出したからです。ほかにも、国内か国外か、為替の動きをどう扱うか、どこで口座を開くか、といった軸があります。足したい軸があるなら、同じやり方で足せます。3つという数のほうに意味があるわけではありません。
- 問 預けるのは投資ではないのに、同じ表に並べるのはおかしくないか。
- 答 その違和感は残しておいてよいものです。言葉の線引きは人によって違い、預金を投資に入れない使い方も一般的です。同じ表に置いたのは、お金の出し方という軸で見ると、預けることも並びの端に置けるからです。端を置いておくと、ほかの出し方が何を引き受けているのかが見えやすくなります。